失われた地図 (角川文庫)
失われた地図 (角川文庫) / 感想・レビュー
さてさて
「空に黒い水玉模様。草間彌生の新作か」「ヤマト、発進」などなど、もうはちきれまくった恩田さんならではの世界が日本のあちこちの都市を舞台に繰り広げられるこの作品。知っている街のことが出てくると、この作品のためにきちんと取材されたのだろうな、ということもわかる街の歴史にも触れた丁寧な描写。一方で登場人物は近づくことを全身で拒みたくなるような人ばかり。全くもって正体不明なお近づきにはなりたくない人々。最後までためにためて明かされる遼平と鮎観が離婚した理由も別世界の人間感が強まるばかり。とても異世界な作品でした。
2020/11/29
yoshida
読んでいて「常野物語」を連想する。能力者の一族が異形と対峙する。場所は軍にまつわる土地。読みやすいが内容に深みが足りないと思う。一族の背景も明かされる内容が少なすぎるので消化不良。鍵を握るかに思われた、くだんも登場するのは最初だけ。対峙する勢力は何故現れるのか、また目的が読み取れず。私の読解力が足りないのだろう。恩田陸さんの作品では、やや残念な部類。恩田陸さん自身も出版するにあたり納得したのだろうか。出版社の企画意図も不明。出版社の担当もいる筈だが、何を狙ったのだろうか。さらっと読めるが印象は薄い。残念。
2021/07/17
dr2006
恩田ワールド全開!現実的ではないとわかっていても、本の中に生じる共同幻想から抜け出せなくなる恐さ。それが恩田ホラーだ。人々が起こす負の感情に反応すると、異次元と繋がった「裂け目」が現れる。一般人には見えないが、惨事と言われるものの多くはこの裂け目が原因である。争いの気配を察知し、過去に蓄積された負の記憶が物体となって湧き出てくるからだ。遼平と鮎観はこの裂け目を察知し、封じる力を持つ一族の出身で、結婚し、二人の間に俊平が生まれた。俊平の能力がラストシーンで開花するが、その先のストーリーがもっと読みたかった。
2020/08/26
眠る山猫屋
再読、データ跳んだ!?楽しめたから善しとしよう。恩田さんにしては軽妙な展開。戦争の傷痕に生まれる《裂け目》。其処から現れる“グンカ”と呼ばれる亡霊のような存在と、それを人知れず封じてきた一族。鮎観と元夫・遼平たちの転戦の物語。特に遼平パートがコミカル。相棒の浩平は無口で、ほぼ一言しか喋らないし、関西担当のカオルちゃんは元自衛官の豪腕ニューハーフ(?)だし。毎回とんでもない数のグンカに囲まれるはめになる遼平の戦いは奇天烈(笑)最初は『光の帝国』のバージョンかとも思ったが、違うようだ。ちょっと尻切れトンボ感。
2024/06/14
だまだまこ
シリーズ物の途中だけ読んでしまったかのように、強烈な世界観の中に放り投げられる。街中に突然現れる「裂け目」を縫うことを生業とする鮎観と元夫の遼平。続々と現れる「グンカ」との戦い。圧倒的なSFファンタジーに、想像力が追いつかない場面もあったが、花見をしていて過去の自分たちと出会う場面は印象的だった。終わりが始まりのような、そんなラスト。これから開花していくであろう息子の俊平のその後が気になる。
2020/04/03
感想・レビューをもっと見る