いいからしばらく黙ってろ!
いいからしばらく黙ってろ! / 感想・レビュー
のぶ
全く知らない初めて読む作家さんだったが、読んでいて元気の出てくる異色の青春小説だった。主人公は上が双子、下も双子の5人兄弟の龍岡富士という女性。家庭的には何不自由なく育ってきた富士だったが、許婚に婚約を破棄され、就職先もないまま東京に残った彼女は、ひょんなことから弱小劇団の運営にかかわることになる。この手の作品に共通しているのは金銭的な苦労。「見上げてごらん」という演劇を成功させるために奔走する。ほかの団員仲間との触れ合いが活き活きしていて素晴らしい。芝居は成功するのか?一気読み必至の一冊。
2020/03/12
よっち
実家では上と下の双子に振り回される生活を送り、大学卒業直後には婚約者も就職先も住む場所さえなくなってしまった富士。ふとしたきっかけから弱小劇団の運営にのめり込んでゆく青春小説。大学卒業後に親の勧めでお見合い結婚する予定が白紙にされて、その傷心を友人だと思っていた同級生たちに全否定された富士。そこからどう考えても破綻寸前の弱小劇団バリスキに魅せられたのめり込んでゆく彼女が、ほんとにその選択でいいの?を何度も突き付けられながら、それでもハイテンションで最後まで駆け抜ける展開には著者さんらしさがよく出てました。
2020/03/23
あおでん@やさどく管理人
リーダーの南野をはじめ、劇団のメンバーはみんな"超"がつくほどの個性派ぞろいで、物語は当然カオスになっていく。そんなカオスの中を富士と一緒に突っ切っていくような文章は、読んでいて気持ちがいい。ずっと調整役として自分の思いを抑えてきた富士が気付いたのは、「自分の気持ちは言わないと伝わらない」ということ。それに気付いて変わり、さらにあれだけのカオス処理能力を持つ彼女なら、この先どんなドタバタがあっても収められそうな気がする。
2020/08/22
ゆなほし
大学卒業式の夜居酒屋から飛び出した富士は、バーバリアン・スキルという劇団と衝撃的な出会いを果たす―。生まれた時からずっと自分に足りないもう1人を探し続けていた富士が、自分の常識の範囲外にある劇団に出会い、翻弄されながらもやりたい事を見つけていく過程は、どう考えても普通では無い。それなのにどうしようもなく「生きてる!」感が迸るのは、著者ならではの物語の疾走感、怒涛の勢いで伝わる感情表現が眩しいくらいに刺さるからか。「これが地獄なら、落ちてよかった!」富士の言う地獄も、著者にかかれば最高に素晴らしい。
2020/07/31
kei302
劇薬青春小説。過剰な修辞語やモノローグで飾り立てないカジュアル竹宮文体。読みやすい。意味不明なテンポ感ときどき高揚感。劇団の事情とともにすっかり魅了される。27歳で劇団の主宰で収入はパパの店で働く分だけで/中略/虫のごはんで演劇ばか。南野正午はそういう人だった。そういう人に、自分はついていくことを決めてしまった。というか現在進行形でついてきてしまっている。この後は風呂まで借りる予定だ。「私、ここにいていいんだ」何となく疎外感を感じているアナタに元気を与えてくれる1冊 #NetGalleyJP
2020/02/10
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