バルタザールの遍歴 (角川文庫)
バルタザールの遍歴 (角川文庫) / 感想・レビュー
taku
知識の裏付けを感じさせる時代描写やブロットの運び。小説巧者だね。一部で巧いだけかなと思ってたら、二部が進むと騙りやサスペンス風な展開の面白さも立ち上がってきた。双子の存在と関係が気になる。精神が分かれた自分なのか。完全な分離も一体化もせず、互いを伴侶として生きていく。酒に溺れ、追う者から逃れ、退廃的でも暗い雰囲気にはならない。そこも面白さではある。ただ、強く引っ掛かるものがあったわけではなく不思議な読後感になった。
2024/03/07
Porco
なんと言ったらいいだろう二重人格?精神的なシャム双生児?なんだかんだで劇中で表現されていた「2人に対して1人の肉体」というのがしっくりくる。没落貴族の放蕩とダダ主義的な転落の中世から脱せていない貴族主義のような耽美作品かと思っていた…がしかし裏切られた。確かに転落はしてはいるもののナチの拷問、砂漠への置き去り、決闘とファンタジーな冒険小説的な趣もあり、強いて言うならクラシックなフランス小説×娯楽の強いファンタジー小説が組み合わさったニコイチの小説だ (1/2)
2023/08/05
かすり
バルタザールとメルヒオールは一つの肉体を共有する双子。単純に解離性同一性障害かと思いきや、父の死から物語はファンタジー色を帯びる。けれどこの設定は物語の装飾でしかなく、ウィーンの貴族が時代に翻弄されながら如何に没落していくか、が主眼。語り手が入れ替わる構造は慣れが必要だけれど、戦争の足音に怯えながらもどこかコメディタッチの物語にぐいぐい引き込まれていく圧倒的筆力はデビュー作とは思えない。作中にもあるが、キュビズムの絵画を鑑賞したような、不思議な読後感。
2020/05/28
あ
1人とも2人とも言える語り手が、互いに反目することもありながら過去を回想する個性的な構成の小説、こんなの見たことがなかった。語り手が異なる解釈を待っていたり、語り手自身に隠し事をしたり。現代の日本人作家の作品ということに驚くほど、舞台となっている国と時代の匂いがしっかりある。
2024/03/16
あるまじろの小路
最初はメランコリックな没落貴族譚かと思って読み進めているうちに違和感がだんだん大きくなり、やっとわかったと思ったらまだまだ隠された設定があって、あっと驚いているうちに終わってしまった。やられた。
2023/06/07
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