天使・雲雀 (角川文庫)
天使・雲雀 (角川文庫) / 感想・レビュー
ベル@bell-zou
粋なラストにため息。“感覚”を持つ者たちの駆け引き騙し合い。極上のスリルに深く引き込まれていたのに最後の一文で軽々と解き放たれる。感覚を開ける・他人のそれを掴む。現実には有り得ない現象も巧みに紡がれた言葉が指し示すままゆっくりと想像を巡らせば妖美と畏怖が混じり合う驚異の世界に魅せられる。第一次世界大戦を背景に「天使」から「雲雀」まで主人公ジェルジュと同じ”感覚”を持つ者たちが絡み合い物語を織り成すが、中でも役人ダーフィットがもたらす不思議な温かさが母・ヴィリの過去と相まって気付く真実に嗚呼と心震えた。
2024/09/24
小夜風
【所蔵】面白かったけどめちゃくちゃ読み難くて苦労した。第一次世界大戦前後のオーストリア=ハンガリー帝国を描く歴史物であり、特殊能力を訓練するSFであり、主人公ジェルジュの半生の物語。他者の思考を読み、操ることも出来る〈感覚〉という能力が、書かれていることをいくら読んでも情景がなかなか浮かばなくて、自分の想像力の足りなさに悲しくなった。話はとっても面白いのに、とにかくいろんなことが判り難くて、置いてけぼりにされながら読んでしまった印象。でも本当に読み応えがあり面白かった。世界史をもう一度勉強したくなった笑。
2021/06/11
きゃれら
第一次世界大戦をオーストリアから見た歴史スパイロマンとサイキックウォーという異質な要素を組み合わせた上に、「天使」「雲雀」とのタイトルで、そういうユニークさを全く感じさせない、という特異な作品。他の方の感想にもあるように、読み易いとは言えず、僕は物語から迷子になることが何度かあったが、ページをめくる手を止めることはできなかった。こういうのは、きっと、ほかの作家には真似できないんじゃないか。とても日本的な感じもあって、海外にもこういう作家はいない気がする。とにかく普通じゃなかった。
2021/06/25
鳩羽
飲んだくれのバイオリン弾きに育てられていたジェルジュは、他人の感覚を読んだり干渉したりする能力を持っていた。やがて顧問官と呼ばれる男に引き取られ、教育を授けられて、さらに能力を開花させていく。第一次世界大戦前のオーストリアで工作員のような仕事をしながら、誰のための、何のための仕事なのか分からないまま、ジェルジュは任務に翻弄されていく。…特殊な能力、環境にある主人公だが、成長や反発、出生が明らかになるところや、束の間の友情、女関係など、エピソードには王道感があって、重苦しい雰囲気ながらも楽しめた。
2020/10/13
本とフルート
「スイングしなけりゃ意味がない」に続き、佐藤亜紀さんの作品は2冊目。歴史的な背景を生かして切って、描き出された世界に没頭した。戦闘場面の迫力に、息づく人々との出会い、そしてもちろん筋書きもまた、夢中にさせてくれる。同じ第一次世界大戦を描いた作品でも、作者によって全く視点が異なることが興味深い。
2021/01/10
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