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砂上 (角川文庫)

砂上 (角川文庫)

砂上 (角川文庫)

作家
桜木紫乃
出版社
KADOKAWA
発売日
2020-07-16
ISBN
9784041095973
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砂上 (角川文庫) / 感想・レビュー

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じいじ

文芸書編集者のたのしみは、未来の売れっ子作家を見つけ出すことである、とむかし何かで読んだことがある。本作の主人公は、37歳で別れた夫から月々5万円の慰謝料を受け続け、ひそかに小説家を目指す四十女。その主人公の新人賞応募作品に鋭いツッコミを入れる女編集者との掛け合いが見どころの一つだ。小説家への道筋に向けて、容赦のない言葉で激励する裏に、主人公への深い思いやりを感じます。小説を書きあげる苦しみを綴った私小説のような本作は、桜木さんの新境地の一冊です。

2020/08/22

dr2006

別れた元夫からの慰謝料5万円がなければ生活が立ち行かない主人公柊令央が、一冊の小説を書き上げる迄を小説にした作品。令央が書いた小説が本作になっているという面白い構成だ。桜木さんの描く主人公は、葛藤や奔走といった単純な言葉では纏められない。負の領域の黒雲に満たされた様な「やるせないさ」を付帯しているのに、文章は美しく読み易いから引き込まれる。過酷を跳ね除け、強く生きていく女性が主人公だからかもしれない。波打ち際に立った裸足の裏の砂が、波打つ度に解けて無くなっていく。そんな危うい「砂上」を感じた。

2023/12/25

TakaUP48

筆者が語る「書けても恥、書けなくても恥でした」というこの作品は、うだつの上がらぬ小説家志望の女・柊令央と編集者・小川乙三の出会いから始まる。乙三の批評と要求が厳しい。「『みんな薄情、みんな鈍感』の切り口は面白い」「血の流れ出る様が見える虚構を読ませて頂きたい」。令央は母が墓場へと持っていった秘密を書く決心をする。母の死後、令央は母に連れられ世話になった助産婦の元を訪ね、母の写真集を見せられ過去を知る。物書きをする人は、何かの弾みで、頭の中に文章が次々と浮かぶんだろうなと思った。現実と虚構が交錯する作品。

2022/08/23

JKD

自由奔放だった亡母ミオと、妹であり娘である快活な美利とのぼんやりした関係を虚構として再構築し、砂上というタイトルで小説にしようとする玲央。しかし自身の感情表現の薄さと現実の厳しさとの狭間でどうしても物語として構成しきれず幾多の葛藤に苦しむ。こういった静かで強い女性、いや強くなっていく女性を絶妙な感情表現で読ませてくれる桜木作品はやっぱり病み付きになります。

2020/07/25

里季

桜木紫乃さん作品はしばらくぶり。いつも北の大地北海道を舞台にしている。本作はいつもよりトーンが明るく感じた。それは小説を書きあげる主人公のエネルギーゆえか。編集者乙三の辣腕が面白かった。

2020/09/09

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