魔力の胎動 (角川文庫)
魔力の胎動 (角川文庫) / 感想・レビュー
Tetchy
本書は『ラプラスの魔女』の前日譚であり連作短編集の構成で羽原円華の名刺代わりとも云える事件が繰り広げられる。彼女がそれぞれの問題をスパコン並みに計算して解き明かす一方で、最終的にそれぞれの登場人物の問題を解決するのは数式やロジックとかではなく、各々の心に発破をかけて感情に働きかけて成し得ることだ。即ち人の心の力は論理や計算を凌駕し、困難を克服する力を持っているという円華からのメッセージと受け取れるのだ。彼女に関わる人間の心を動かす、情理の両輪を両立させた物語が今後どんな作品になるのか、大いに期待したい。
2022/04/07
パトラッシュ
東野圭吾は工学部出身だが、理系のトリックや探偵役は「ガリレオ」の湯川学と「ラプラス」の羽原円華だけだ。読みやすさを考えてと思うが、同じ理系で全く異なる推理術を備えた探偵の創造が難しかったのか。その点、データ解析手法で真相を探る湯川に比べ、まず直感から状況にあてはまるパズルを組み立てる円華は正反対の存在といえる。スポーツや事故での空気や水の流れを的確に読み、思いがけない力の作用を解明するプロセスは他にない意外性に満ちている。円華と湯川が推理を競うクロスオーバー作品を読みたいが、出版社が違うので無理だろうな。
2023/02/01
イアン
★★★★★★★☆☆☆『ラプラスの魔女』の前日譚となる連作短編集。鍼灸師のナユタとあらゆる物理現象を瞬時に予測できる特殊能力を持つ少女・円華が、引退間際のスキージャンパーやパートナーを失った同性愛者のピアニストなどの苦悩を解き明かしていく。各話とも円華の特殊能力だけに頼らない温かいオチが用意されており、人の感情や努力は科学の領域を超えた先にあるのだと実感させられる。一方で、ミステリ要素はやや弱めで、本作のみではその特殊能力や人物背景に唐突感があるので、やはり『ラプラスの魔女』読了後に読むことをお勧めします。
2021/06/16
あきら
ラプラスの魔女を読む前に読んだ。 読む順番で登場人物のイメージが変わるな、と思った。 逆だったら、きっといい頭の中の登場人物の雰囲気も変わったのだろう。 短編で構成されていて、読みやすかった。
2021/05/02
ま~くん
ラプラスの魔女の前段と聞いていたが、第一章・第ニ章とスポーツ選手が絡む不思議なお話。学生時代捕手一筋だった自分的にはナックルボールの変化の理論はとても興味深く勉強になった。ニークロというMLBで実在していた伝説のナックルボーラーの名前も出てきたし。後半に進むに連れて、ラプラスの魔女本編の話に登場した人物が次々に出てくる。でも魔力の胎動は後に読んだ方がいいかな。その方がよりニヤニヤできるはず。ボクシング風に言えばラプラスの魔女に対する的確な「ジャブ」みたいな内容だと思います。
2022/02/05
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