悪玉伝 (角川文庫)
悪玉伝 (角川文庫) / 感想・レビュー
のり
吉宗公の治世下の大坂。大店の主が急逝し、独立していた道楽好きの弟「吉兵衛」が駆けつけるが、大番頭が暗躍し、養子として入って婿となるはずだった「乙之助」も秘事を囁かれ法要中にも関わらず泉州の有力者でもある実家に出奔する。主を失った店を支える為に心を入れ替え、跡目を一時預かる事にした吉兵衛だが、訴訟をおこされ、大坂・江戸を巻き込んでの大騒動。金銀貨幣価値の根深い事情も絡んでのみせしめとなるのか…大坂商人魂をみた。本当の悪玉とは…
2021/03/01
佐島楓
史実にフィクションを混ぜ込む手法と、登場人物を魅力的に見せる筆力が相変わらずすごい。時代小説は得意というわけではなかったけれど、良質の作品に多く触れることでだいぶ苦手意識を払しょくできた。これからも朝井さんの作品は注目していこうと思う。
2021/03/15
sin
ありふれた時代劇の悪徳商人ネタを逆手に取っての筋立ては、町人同士の跡目争いに侍の利害が絡んでの泥仕合! 粋な大坂商人と野暮な侍の建前勝負の結末や如何に?勧善懲悪は薄っぺらな夢物語で、深い人間関係の物語は言い分を持つ者と言い分を利用するもの、どちらも白州裁きの公明さの裁く都合で転ぶ解釈に、時代や、はたまた立場に依って変わる正義の難しさを感じさせた。
2021/02/21
優希
面白かったです。大坂と江戸、正反対の志士の物語が交互に進むので、何が悪玉か、どう結びつくのか考えながら読みました。意外な展開に驚かされます。人は自分の判断で物事を見るので、悪人もそれぞれなのでしょうね。思いがけない印象を相手に与えることもありますし。
2021/02/26
のびすけ
生家である辰巳屋の乗っ取りと役人らへの贈収賄の罪で捕えられた木津屋吉兵衛。辰巳屋を巡る吉兵衛と唐金屋の争い、お裁きの顛末が描かれる。史実に基づいて物語を緻密に構成し、その中で人物を生き生きと描く朝井まかてさんの筆力はさすが!と思う一方で、金遣いが荒く金の力で物事を収めようとする吉兵衛に最後まで共感できなかった。吉兵衛の真っ当な商人としての姿が描かれていないことも、感情移入できなかった要因かも。
2021/03/11
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