信長の原理 下 (角川文庫)
信長の原理 下 (角川文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
下巻の描き方を見ると、作者の信長像は冷酷にして非情である。かつて苦楽を共にしてきたはずの家臣たちに対してもそうであったが、とりわけ光秀へのそれは行き過ぎであっただろう。光秀の懐疑も屈辱も無理もないところかと思われる。本書では一貫して「信長の定理」に則ったものであったために、必要以上にそうした側面が強調されたのでもあっただろうが。そうした意味で終章の「崩落」では、読者の視点や共感も光秀に移行していくのは自然な流れであったのかもしれない。
2023/01/27
W-G
下巻は織田家重臣の出世レースがメイン。各々の内面描写が順次されるので、どこか陰謀小説風な読み口。この流れで光秀がどう無謀に踏み切るのか、興味深く読み進めたが、中途半端に善人仕立てのためか、運命に逆らえませんでした的に本能寺の変に突入したのは少し物足りなかった。あれこれと悩みながら己の行動に理由づけしているものの、信長の振る舞いはじゅうぶん過ぎるほどブラックで、パレートの法則を持ち出すまでもなく、なるべくしてこうなっただけでは?という気もする。家康の内面描写だけほとんどなく、その不気味な存在感は良かった。
2021/07/12
yoshida
下天は夢であった。信長は時代の革命児であった。その発想力、行動力は時代を超えていた。だからこそ、旧弊に生きる人々には理解し難く、恐怖でもあった。信長の死後に天下を治めた秀吉も信長を超えることは出来なかった。秀吉の天下は、かつての織田家の朋輩を組下にしたものである。出自が低く、信長のような専制君主にはなり得なかった。家康の天下は幕府を開くという、朝廷の権威を借りた頼朝以来の手法である。鎖国により先進的な技術や知識を得ることを閉ざした。安寧ではある。だが、信長のような専制君主にはなり得ず。実に唸らされた力作。
2021/01/02
ミュポトワ@猫mode
せっかくの初版本が雨でボコボコに…悲しい😢…っで、時間がかかってしまったが、下巻も読了。そうか、この本は歴史小説だったのか…新解釈の歴史考察ものとして読んでしまったよ。そうかそうか、何か読み方間違っちゃったのかもね。さま~ず三村さんの書評を先に聞いていたのが悪かったのかも。先入観なしに読んだらまた違ったのかもしれないですね。でも本としてはかなり面白い部類の小説だし、歴史好きならなかなか楽しめるんじゃないかなって思います。光秀のほうも読んでみようかな?
2023/09/15
chantal(シャンタール)
信長が発見した働き蟻の「2-6-2」の原理。その原理を縦軸に、彼の部下たちの思いや物語を横軸に、新鮮な語り口による信長の一生。この原理って、今の社会にも当てはまるのかなあ。そしてそう言った原理を動かしている目に見えない力があって、それが私たちが敬うところの神仏なのかなと思ったり。それをも超えようとした信長は遂に自らを滅ぼすことになる。今の私たちがしていることも同じなんじゃないのか、自然の摂理を覆えそうなんて、考えちゃいけないんじゃないかと、ふと思ってみたり。そして凡庸な私は「6」の中の一人なのよね😅
2020/11/10
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