女生徒 (角川文庫)
女生徒 (角川文庫) / 感想・レビュー
こーた
桜桃忌をまえに。女性の告白体小説ばかり14篇がならぶ。なかにはすでに読んでいたものもあったけれど、というか以前ラジオで聴いた石田ひかりさんの朗読があまりに素晴らしくて、その底本てことで手に取ったのだけど、何度読んでもその巧さにうならされる。これぞフェミニズムの先駆といっていいのでは。MeTooならぬ、WithYou文学だ。お気に入りは「雪の夜の話」。表題作は圧倒的だし、「恥」「葉桜と魔笛」の顚倒や「誰も知らぬ」も良い。「十二月八日」「貨幣」など、いまの非常時とも重なる戦時下の暮らしを読めたのもよかった。
2020/06/13
buchipanda3
収録作はどれも女性の一人語り。女生徒や人妻など様々な女性の思うがままの独白、心の葛藤が綴られており興味深く読めた。当時の世相も匂わせるが、根底にあるのは周囲に合わせようとする自分と素の自分とのズレに煩悶する姿。それは著者自身も浮かんでくる。「女生徒」は自我がふらふら揺れ動く若さが特徴的な文体で伝わってくる。「燈籠」の女性の自己の曖昧さが最後には吹っ切れた感じが良い。「おさん」は夫の理屈と妻の現実性の対比が印象的。著者は色々と幻滅を語りながらユーモラスさを忘れない。それがつい読みたくなる魅力の一つに思えた。
2021/06/09
ナマアタタカイカタタタキキ
実は太宰治とは女性だったのだ、と言われると、嗚呼そうだったのかと信じてしまいそうな出来。よくある男性視点からの都合良く解釈されたヒロインのものではなく、もっと実際のように生き生きとしていて、ひらひら翻る度に見る者を惹き付けるそれ。表題作はまさに太宰版『枕草子』とでもいえるほどにそれがよく表れていて、中には『おさん』や『貨幣』のようにやや深刻な心持ちにさせられるものもあるが、微笑ましかったりはっとさせられたり、とにかく飽きさせない。言葉を散歩する、とでもいうように、ちょっとした気晴らしのようにして楽しめた。
2020/05/08
chiru
中学生くらいの頃に読んで感銘を受けた本を姪にプレゼント。 女の子の気持ちが、もう胸が痛いほど分かる。 両親が求める良い娘になりたい、両親の期待に応えたい。 その願いと相反する、自分に嘘をついてるような罪悪感。 誰かに勝手に引かれた境界線への嫌悪感とか、個性を認めてもらうことの難しさと羞恥心とか。 カオス化した葛藤が、素直でまっすぐ。 インチキを嫌うところは『ライ麦畑…』っぽくて、ほんとに大好き。 ★4
2019/04/10
のんき
女性の告白体で書かれた短編集でした。女性の気持ちを、上手く表現しています。男性作家なのに、女性のデリケートな、揺れる感情が、どうして書けるのか不思議。太宰治のような作家なら男も女も書けるのでしょうが。女性にとって、他人には自分の知られたくない部分もあるし、逆に誰かに気づいてほしいところもあるし、女心は複雑です。
2018/01/11
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