散り椿
散り椿 / 感想・レビュー
文庫フリーク@灯れ松明の火
余命いくばくも無い妻からの頼み。夫・新兵衛に故郷に戻り為して欲しい事とは?藩主側用人にして出世頭・榊原采女の義父を斬ったのは誰か?妻の遺した言葉・和歌の真意は?謎に引き込まれ一気読み。物語として直木賞『蜩の記』を上回りました(個人的印象です)鮮やかに裏返される妻の遺言・和歌。中年となった我が身と友・身分も生死も、かつて道場四天王と呼ばれた「あの若者たちはどこへ行ってしまったのだろう」切腹させられた父の汚名そそぐ為、出世に走る若武者・藤吾の、嫌っていた新兵衛の影響で変わり行くさま。→続く
2012/03/13
財布にジャック
直木賞受賞作の「蜩ノ記」を、不覚にも図書館で読んでしまい、涙を堪えきれなかった失敗を生かして、自宅でひっそりと読みました。本当に素敵な作品で、葉室さんの小説を読むのは6つ目ですが、今までで一番好きです。平山道場の四天王といわれた4人の男達の過去が知りたくなり、まるでミステリーのようでぐいぐいと読まされます。恋も友情も家族愛も、そして藩への忠誠心も、これでもかという程沢山のドラマが詰まっていました。涙なしでは読めませんが、是非是非沢山の方に読んでもらいたい傑作です!
2012/07/08
藤枝梅安
扇野藩の若い下級武士・坂下藤吾は山廻りの際に、一人の浪人と出会う。瓜生新兵衛は藤吾の母・里美の姉・篠の夫である。上司の不正を訴え藩を追放された新兵衛は江戸、京都を転々とし、篠の死後、篠の願いを叶えるために生まれ故郷に戻ってきた。伯父である新兵衛を疎む藤吾だったが、平山道場の四天王と呼ばれた4人がそれぞれの職責・立場を貫いて行く姿が次第に明らかになる。政争に巻き込まれていく藤吾を支える新兵衛。家老の不正、謎解き、秘めた純愛、青年武士の成長、新たな世代に託す潔い去り際、など、葉室ワールドを満喫できる作品。
2012/07/07
kazu@十五夜読書会
不正を訴えながら疎まれ藩を放逐された瓜生新兵衛が、妻を看取り18年ぶりに山国の小藩に帰郷した。親類の藤吾は、迷惑なことと眉をひそめるが、やがて藩の不正をめぐる権力抗争が表面化する。追われた男はなぜ帰ってきたのか?新兵衛の妻篠の残す和歌の真意は、「くもり日の影としれなる我なれば 目にこそ見えね身をばはなれず」、最愛の夫新兵衛を生かすために自らの気持ちを偽り、実家の散り椿を見る事を約束させる。家督争いに巻き込まれた道場の四天王の其々の運命・生き様、真実の夫婦の愛の行方、篠の切ない愛情あふれる作品。
2013/03/26
ひらちゃん
散る椿は残る椿があると思えばこそ見事に散っていける。同じ道場で共に鍛錬した四人の武士の生き様。すべてにおいて一件落着といったわけにはいかないけれど、こんな終わり方も好きです。映画化するそうで、キャストもピッタリと言えそう。良作です。また一つ葉室さんの作品に触れられました。まだまだ追っていきたい。
2018/03/31
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