無花果とムーン
無花果とムーン / 感想・レビュー
ひめありす@灯れ松明の火
月夜は奈落のことが、えいえんにだいすきだからね。ピーナッツバター味の甘ったるい口づけが、その悲劇の始まりだった。血の繋がらぬ兄と妹が犯すただ一度だけの禁忌。花の咲かない無花果の葉陰。隠すべき秘密は顔か胸か、それとも下腹か。原罪に揺れ、兄の面影を探して楽園を追放され、そして飛び越えた現幽の境界。無花果の葉が欠片を隠し愛情と秘密が奏でる調べ次第に乱れて織り重なり、奈落と密と月夜のパ・ド・トロワは狂い舞う。文字通り奈落に堕ちた月夜。そこから見上げる出口はきっと、満月の光とよく似ている。貴方を思って泣けばよかった
2013/04/29
くりきんとん99
久しぶりの桜庭さん。兄・奈落の死が受け入れられない義妹の月夜。最初から最後まで月夜が見てる夢を読んでいるようなそんな感覚だった。奈落の葬儀の後は、ずっと、ふわふわした感じ。その後の月夜が気になる。 それにしても、桜庭さんの作品に出てくる登場人物の名前って・・・スゴイ。
2012/11/17
風眠
無花果町で育った、もらわれっ子の月夜。大好きなお兄ちゃん・奈落のお葬式から物語は始まる。泣くことも、諦めることも、落ち込むこともできない月夜。忘れるなんてしたくないという月夜の気持ちと、まだ成仏しきれない奈落の気持ちが呼び合う。コンビニの駐車場で、紅茶のお砂糖で、リンリンって鳴る自転車のベルで。無理に忘れることはない、少しずつ、ひとつずつ、自分の中でお別れしていって、そしてやっと泣ける準備が整うのだろう。それにしても桜庭女史のネーミングセンスは色んな意味ですごいな。苺苺苺苺苺で「いちご」とか、密と約とか。
2014/01/26
エンブレムT
綺麗な花をポキリと手折る。そんな感じに物語の核になる部分は単純で、でもその膨らませ方は不思議なくらい歪で、その味付けはドロリと濃く甘い。「桜庭作品を読んでるなぁ」と随所に感じられる作品でありました。紫色の瞳を持つ美少女・月夜には、血のつながらない父と2人の兄がいる。物語の冒頭で既に事は起きている。月夜の1つ年上の兄・奈落。女の子から絶大な人気のあったお兄ちゃんが、19歳でこの世を去っているのだ。誰もが微妙に本当のことを言わないまま進んでいくミステリーのような空気があるため、ひたすら真相が気になりました。
2014/07/20
sk4
大好きな義兄を亡くした女子の青春小説・・と捉えてしまうと、本当に何かイラつく女の生態見せられたわ~と感じてしまうかもしれませんが、桜庭一樹という作家の特性を考えるに、これもセカイ系の描写の試みなんだということで腑に落ちる。 義兄、奈落のセカイに内包されframeを一部共有していた月夜のセカイ。奈落の死で月夜はそのframeの欠損を、奈落の亡霊を存在させることで補完する。そして最後、闇に飲み込まれる月夜にセカイを取り戻させるのはまさかのハッピー・エンドゥ苺苺苺苺苺。 私はこの本、シンクロ率120%でしたw
2013/08/16
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