さわらびの譜 (単行本)
さわらびの譜 (単行本) / 感想・レビュー
hiro
葉室作品は『蜩ノ記』以来2冊目。『蜩ノ記』を読んだときは藤沢周平の『蝉しぐれ』を思いだしたので、今回は「弓矢小町」と呼ばれる武芸に秀でた女性主人公から、剣と弓の違いはあるが、映画化もされた藤沢周平の短編『花のあと』のイメージを持ち読み始めた。読了後比較すると、想いを遂げられない刹那さと無念、時代小説ならではの、あだ討ちを遂げる爽快感の『花のあと』に対して、『さわらびの譜』は、派閥抗争に巻き込まれ、恋する人と弓での直接対決、刺客との対決、主人公伊也だけでなく妹初音の恋と、長編ならではの話の広がりを楽しめた。
2013/11/30
くりきんとん99
タイトルで感じられるとおり、清々しい、そしてとても描写のキレイな物語だった。女弓士の伊也の真摯さ。伊也の妹、初音の純粋さ。そんな伊也たちを藩の派閥抗争に巻き込まれていく。伊也が行うことがことごとく悪い方向へ。展開も早く、目が離せいない。でも読後感はすごく良かった。
2013/10/28
藤枝梅安
葉室さんの小説を読むのは4年前の「銀漢の賦」から数えてこれで25冊目。二人姉妹と二人の若者が「矢」を通して惹かれあい、望みを捨てずに運命を切り開く物語。若い藩主と老練な家老という、よくある設定の中で、若者たちが「矢を通す」という行為に象徴される真っ直ぐな生き方と、「矢を留める」という命を守る行為の両立をいかにして成し遂げるのか。さらにそれを見守る師の姿など、葉室作品のエッセンスが詰まった1冊。万葉集の中の「さわらび」を歌った一首と、源氏物語の「早蕨」を巧みに織り込んで、物語に典雅な趣を添えている。
2013/10/16
TATA
勇壮な姉妹の物語。姉は弓の達人、妹はその姉を支え、藩主の心を改めさせていく。起承転結がはっきりしており非常にストレートな話。勧善懲悪さも相俟ってまるで紙芝居のようなわかりやすさ。唐突でかつ、少し盛り上がりに欠ける前半ではあるけれど、最後の千射祈願の場面は緊張感が感じられ読み応えがありました。しかし大和流三人衆といい鉄砲隊といい敵キャラのザコっぷりは際だってました(笑)。
2016/05/21
たっくん
日置流雪荷派、弓矢小町・伊也は、藩の弓術・大和流の清四郎と、御前試合を行うが、清四郎に恋心を覚える。しかし、清四郎には、妹・初音との縁組が。清四郎と伊也は、あらぬ疑いを受け、それを晴らすべく立合いを行う。一方、藩政を牛ずる家老・兵部、靱負と刷新を目指す伊也の父・清左衛門との争いがあり、彼らを飲み込んでいく。許嫁・清四郎と、姉・伊也との間で心揺さぶられる初音が、いじらしく哀しい。伊也は、人の煩悩、貪欲・瞋恚・愚痴を祓うため千射祈願に臨む。謎の浪人・左近が、呟く・・・人は、いずれ居るべき場所に居るようになる
2013/12/02
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