眠りの庭 (単行本)
眠りの庭 (単行本) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
北海道出身の作家さんで、直木賞候補にもなった千早さん初読み作品でした。まだ一作品しか読了していないので、なんとも言えませんが、受けた印象は「桜木紫乃」さんと「桜庭一樹」さんを足して2で割ったような感じでした。総合的には悪くなく、桜木さんほど暗くはないし、桜庭さんほど暴力的でもないあたりが、ちょうどよいブレンドになって読みやすさを生みだしているような気がします。官能描写もしつこくなく、サラリとしているので、ジメジメとした気分までには至らないです。他作品も気になる作家さんで続けて読んでみようと思います。
2014/10/10
ベイマックス
2つの作品が掲載。同じ登場人物と特徴的な住居が登場する。◎恋愛小説と云うのかな。語り口は静寂に包まれているからすらすらと読んでしまうが、掘り下げればドロドロな人間の心の闇を浮かび上がらせるのかも。◎恋人になる人とは関係性が濃くなる。それは、現在進行形だけでいいのか?相手の過去は、そして、生い立ちに加え家族や交友関係は、どこまで知らし、知る必要があるのか。そして、信じるのか、疑うのか。
2021/10/14
seri
愛の恐怖。読友さんのこの言葉に惹かれて。まさに、でした。背筋を這う恐怖に圧倒されて上手く言葉が見つからない。知らなかった。愛情って言葉がこんなにも怖いものだなんて。愛することは罪なのか。サロメの超越した自我、妄執に囚われ続ける式子内親王、そして空っぽのイヌガンの女。真実なんてわからない。そこにあるのは事実だけ、彼女だけ。想いに染まる紅い蔦は妄執の鎖。絡め取られて開くは夾竹桃の不吉な赤。呼んで呼ばれて目覚めたのは、自身も相手も喰らいつくす獣。愛という名の、執念という名の、さびしい獣。
2014/02/20
✿yoko✿
色彩の描写、人物描写がとても上手く、まるで一編の映画を見たような読後感でした。親子関係にトラウマのある男女が、お互いを奪い合いような愛に溺れていき、逃れることの出来ない結末へ疾走していく…。蔦のからまる館、暗い庭、赤い…。そして後日談の二話目では、逆に光に満ち溢れているよう なのですが、『好き』の定義について熱く語るところでは、『好き』って感情は、本当に千差万別で、お互いの想いが重なりあうことの難しさを考えさせられました。 この作者の世界観が大好きなので、ゆっくり、じっくり読んでいきたいです。
2015/03/09
なゆ
これはまた、ゾクゾクとした追い打ちをかけられる、どろりと濃厚な2篇。しかも、冒頭の誰かのつぶやき、最後に読み返すともう、私まで赤い蔦に搦めとられてしまったような気分。「アカイツタ」と「イヌガン」は、まるで違った話のように進みながら繋がってしまうのは、さすがの千早さん。ミッション系女学院を中心に「高校教師」のような世界を繰り広げる「アカイツタ」は、なかなか入り込めなかったけど、そこからの「イヌガン」は時々ドキッとさせられる澪に一気読み。この話はまだ続きがありそう。花は何度もくりかえす。まるで彼女のように。
2014/03/19
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