通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする (単行本)
通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする (単行本) / 感想・レビュー
pino
カラフルな花々の表紙に惹かれて手に取った。独特な世界観を持った一冊。のどかな農村一家。そこに雨とともにやって来た旅人。彼の正体はなんだろう。秘密めいた展開にドキドキしながら読んだ。一家の母親の丁寧な暮らし様、思慮深い父親。思春期の娘の感性も細やかに描かれ、羨ましさと懐かしさを感じた。作者によるとファンタジーではなくSF作品とのこと。私はそこら辺りに疎く違いが分からないが、難しくない物語を十分楽しめた。理想的な世界でも自分だけ時間が止まったように思えることがある。そんな人のためにこそ芸術があるのだと思った。
2017/04/26
TANGO
図書館本。タイトルと、出だしの数行に引かれて、沢村さん初読み。小路さんの「キサトア」っぽい話かと思いきや、SF寄りのファンタジー。牧歌的な世界に暮らす六人の家族と、そこに突然やってきた旅人。それぞれの心模様や世界の秘密が、移り変わる天気のように描写されていて、優しい物語だった。「人魚姫の涙」と「てるてる坊主」。願わくは、あの人に降る雨が優しいものでありますように。
2015/03/19
UK
心の中にしんしんと降り積もる上質なファンタジー。淡々とした透明感のある筆致ながら、芯のしっかりとした強さも感じる。各人の体内リズムに合わせて、成長のペースが異なる世界を選べる有り様は、猛烈なスピードで変化が加速されていく現代に対しての1つのアンチテーゼでもあり、お伽噺でもある。作品としての質の良さは感じながらも、自分としてはこういう世界の在り方で現代のジレンマを解くというのは、うーんちょっと心情的には受け入れがたいものがある。いい酒なんだけど好みには合わないっていう所かなあ。
2014/10/10
七色一味
読破。表紙とタイトルに惹かれて借りてみた。SFが好きな方にはオススメ。最初は「死神」のようなものが関係してくる、ちょっとファンタジックなホラーかと思ったけど…。世界の構成とか年齢による制限とか、設定的に微妙に違和感は感じる部分があるけれど。
2014/06/13
むつぞー
2冊同時発売だった内の1冊。物語につながりとか仕掛けとかあるのかな?と思っていたのですが、ありません。全く異なる話です。 今回作者は『世界』というものを描き出したかったのかなと思います。 ある時点で明かされるその世界。ぱっと目の前が開けるような感覚。それが2作に共通したものだったと思います。 その世界観と言うものは確かに面白かったです。 そして、どの世界でも変わらない人の思い…末弟の家族へ向ける思いや恋する思い、外への憧れ…が描かれていた分、こっちの話のほうが好きですね。
2014/03/06
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