アンブレイカブル
アンブレイカブル / 感想・レビュー
starbro
柳 広司は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 本作は、内務省クロサキ・プロレタリア文学連作短編集でした。オススメは、『虐殺』&『矜持』です。 https://www.kadokawa.co.jp/topics/5355 https://kadobun.jp/feature/interview/f407f73zug0k.html
2021/03/14
utinopoti27
1925年、成立当時は適用が超限定的だった治安維持法は、やがて国体護持の名のもと恣意的に運用されていく。本書は、そんな不穏な時代を背景に、この法律の標的にされた実在の著名人たちを描く4部作だ。それぞれ異なる立場で活動する彼らを犯罪者に仕立て上げるのは、内務官僚・クロサキという人物。国家権力による理不尽な弾圧に必死で抗うアンブレイカブルたちに思いを馳せる時、読み手は単なるミステリの枠を超えた空恐ろしさを、肌で感じることになるだろう。なぜなら、それは現代日本における我々国民一人一人の明日かもしれないのだから。
2021/08/09
修一朗
治安維持法が施行されていたのは1925~1945のたかだか20年間だ。その間何十万人もの一般市民が牢獄送りになった。その成立から廃止までを小林多喜二/鶴彬/横浜事件/三木清という囚われ側【敗れざる者】から綴った4篇。憲兵と特高の区別もつかない知識レベルだったがとても興味をそそられた。「手と足ともいだ丸太にして返し」鶴彬-凄いね。「幸福を武器として闘う者のみが斃れてもなお幸福である」-三木清。柳広司さんは,三木清を歴史上の人物として浮かび上がらせたいのだそうだ。興味がわいたので三木清を読んでみようと思う。
2021/05/20
モルク
治安維持法の成立によってアカと呼ばれた政治犯たち。小林多喜二、鶴彬、三木清など実在の人物とそのいずれにも関わってくる内務省参事官クロサキの連作短編集。満鉄勤務の志木が主人公の「虐殺」が印象的だった。次々と人がいなくなっていることに気づくが、まわりはあたかもその人が最初からいなかったがごとく振る舞っている。失踪者の共通項に気づいたとき時は既に遅く…刻々と迫る恐怖にこちらも悶える。容疑など二の次。証拠など作ればいい。とにかく逮捕すれば…多くの有能な者がその餌食となる。日本の黒歴史だ。
2022/01/30
trazom
小林多喜二、鶴彬(反戦川柳作家)、和田喜太郎(中央公論・編集者)、三木清をテーマにした四つの短編集。治安維持法が成立した暗い世相を、独特の雰囲気で描く読み応えのある小説だった。当初は多くの成果を挙げた特高警察は、共産党の壊滅などで対象者が減少する中、検挙者の実績を上げるため、度重なる法改正と解釈拡大によって取締り対象を広げてゆく。「治安維持法は、社会の敵だけでなく、嫌いな者にも適用が可能だった」という言葉にゾッとする。手段が目的になるのが組織の恐ろしさ。なぜ今、この小説が上梓されたのかを考えてみたい。
2021/04/17
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