祈りのカルテ (角川文庫)
祈りのカルテ (角川文庫) / 感想・レビュー
bunmei
医療現場を舞台として、若き研修医が主人公。研修医の諏訪野は、大病院内の様々な科を研修で巡る中で自分に相応しい科を模索する。その中で様々な病状を抱えた患者に対峙し、情熱をもって心を開いていく。単に感動的な医療物語ではなく、固くなに閉ざした患者の心を推し量る推理や考察の面白さは、専門的な医療現場を知る知念氏だからこそ、描くことができる。若さゆえに、時として危なっかしい場面もあるが、誠実に、患者に寄り添う医師としての理想の姿を見せ、命を預かる医師としての確かな自覚を高めていく研修医の成長を描いている。
2021/03/28
ALATA
初読み作家さん。研修医が病院内で起こる謎を解き明かす連作短編ミステリー。精神科、外科、内科、皮膚科と研修先で一癖ある患者と向き合う真摯な姿勢が好ましい。病気を治すことは人を思いやること、良太のコミュニケーション力が羨ましい。まさに「医は仁術なり」ですね★3※バチスタ系と思いきやERのような人間味あふれるハートフルな読み物でした。ただ、ちょっと「泣ける」の帯に惑わされたけど、次は「仮面病棟」を読んでみたい。
2023/04/13
エピファネイア
純正会医科大学の研修医諏訪野良太。各診療科を順番に回り将来専門医として取り組む診療科を模索中。各科での研修中に遭遇するちょっと訳ありの患者さんたちの深奥に潜む気持ちを汲み取り問題の解決を図る。諏訪野は患者さんからも指導医からも信頼されていて、最後はどの診療科を選ぶのだろうと興味深く読み進んだが、なるほどという選択だった。どんな患者さんにも真摯に向き合って、心の内を読み取るのに長けているからいい医師になるだろう。ガン保険が支払われる基準が保険会社によって異なることは知らなかった。目新しさはないが満足の一冊。
2022/05/03
鍵ちゃん
新米医師の諏訪野良太は、初期臨床研修で様々な科を回っている。ある夜、睡眠薬を大量服薬した女性が救急搬送されてきた。離婚後、入退院を繰り返す彼女の行動に、良太は違和感を覚える。彼女はなぜか毎月5日に退院していたのだ。胃癌の内視鏡手術を拒絶する老人、心臓移植を待つ女優など、個性的な5人の患者の謎を、良太は懸命に解きほぐしてゆく。若き医師の成長と、患者たちが胸に秘めた真実が心を震わす連作医療ミステリー。5話とも自分を犠牲にした話だが、実際の現場では謎解きなど不可能ではと感じた。どれも結果良しになったが。
2022/01/29
ガチャ
研修医の諏訪野良太は二年間の初期臨床研修の間に様々な科を回り、どこの科に行くかを決めるのだ。彼は相手の顔色を窺うのが抜群にうまく、患者と向き合うにはかなり適した人材である。 ただ、科によってはむしろそれがマイナスに働いてしまうこともあって、君に来て欲しいと嘆願されつつも、君には向いてはいないと言われてしまう。諏訪野に合う科はどこなのだろう?忙しいお医者様に患者さん1人1の事情に踏み込んで対応して欲しいと願うのは難しいことなのかもしれないけど、諏訪野先生みたいな人が増えてほしいなと つい思ってしまいますね。
2021/05/31
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