滅びの園 (角川文庫)
滅びの園 (角川文庫) / 感想・レビュー
アッシュ姉
登録本1600冊目は大好きな恒川さん。久しぶりに時間を忘れてひたすら没頭。こんなに面白くて失速しないかという心配は杞憂に終わり、新たなる異世界の壮大な物語で圧巻の読み応えだった。滅亡か存続か、救助か攻撃か、絶望か希望か。さまざまな選択肢にいろいろ考えさせられることも多かった。いやはやこんな凄いストーリーをどうやったら思いつくのだろう。初期作品が一番好みだけれど、スタープレイヤーも面白かったし、本書も素晴らしかった。やっぱり恒川ワールドへの旅は格別だ。
2021/06/29
眠る山猫屋
一気読みだった・・・。ついてない男が迷い込んだリリカルで平和な世界。街の住民は親切だし、電車も走る。記憶だけが薄れていたが、ある日届いた手紙が不穏を招く。一方、現実世界では異次元の存在〈未知なるもの〉が地球を覆い、地表にはプーニーなる存在が増殖し、世界を侵食していた。滅びゆく世界に抗う者、世界を救おうとする者、世界を去ろうとする者。それぞれが魅力的に描かれていて惹きこまれた。『スタープレイヤー』寄りのSF&幻想譚、登場人物それぞれが生き生きと物語を駆け抜けていく。以下、ネタバレあり。
2022/05/10
ゆいまある
【KU】SFファンタジー。疲れきったサラリーマン、鈴上誠一はある日ふと電車を途中で降りてしまう。気がつくと牧歌的な平和な町にいた。そこで鈴上は美味しい珈琲を飲み、幸せに暮らす。ああ、私も自分の人生を休んでこんな所で暮らしたい。ここまでは実に恒川さん的である。次に地球。謎の生物が異常発生し人類の多くが死に絶えるディストピア。地球の上に浮いている鈴上の住むフワフワ世界が謎生物に影響していると分かり、人類は決死で鈴上の世界に乗り込んでくる。ラスト、謎生物の養分はなんと鈴上の。うわーん。悲しいけど良かった。
2024/11/03
annzuhime
突如上空に現れた未知なるもの。地上には白い物体「プーニー」。増殖するプーニーは生き物を支配しプーニー化させる。上空に漂う空間には1人の男が囚われていた。そこで見る世界と地球で繰り広げられる恐怖。恒川さんのファンタジーは怖くて怖くて、でも惹きつけられる。登場人物たちのそれぞれの選択がとても苦しい。誰が正しかったのかなんて決めるのも失礼だ。タイトルの「滅びの園」の意味は読者によって異なるのだろう。
2021/09/21
スカラベ
人類を滅亡へと追い込む異次元の未知なるものが地球を覆う。鈴上誠一が取り込まれた想念の世界は幻想の園ではあるがどこか現実味もある異世界。かたや地球上ではプーニーと呼ばれるプニプニの生物が人類を存続の窮地へと誘う。今回の恒川ワールドはいつもの異界の向こうに壮大なテーマが横たわる。これは選択の物語でもある。何かを選ばなければならない状況では、皆がハッピーエンドにはなり得ない。絶望と希望が隣り合わせの中で彼がとった選択肢が導く結末は物悲しい。選択が行き着く先には産み出された歪の中に憎悪が溢れているのかもしれない。
2021/06/27
感想・レビューをもっと見る