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おんなの女房

おんなの女房

おんなの女房

作家
蝉谷めぐ実
出版社
KADOKAWA
発売日
2022-01-28
ISBN
9784041114421
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おんなの女房 / 感想・レビュー

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パトラッシュ

しきたりに縛られた梨園の妻とは芝居の主役よりもつとめるのが難しいが、自分より美しい女形の女房となると女としての自信すらなくなりそう。しかし貧乏下士の娘に生まれながら人気女形に嫁いだ志乃は、武家の娘というプライドを武器として何も知らない世界の難役に挑んでいく。メンツしか頭にない時代遅れそのものの父親にたたき込まれた武家の娘としての生き方だけを頼りに、まっすぐ前を向いて生きていく姿がすがすがしい。夫を役者として一流にのし上げるという、役者の女房として最高の働きをやってのけた姿は文字通り理想の妻の肖像画なのだ。

2022/04/28

いつでも母さん

呼込から始まり歌舞伎の演目の姫4話、そして幕引きまで面白く読んだ。役者の夫に嫁いだ武家の娘・志乃、夫は家でも女として振る舞う売り出し中の女形・燕弥だ。この2人が悩みつつ変化する心情が面白い。この夫婦の形はいびつなのか?ええぃ、いいんだよぉ。夫婦の形は千種万別なのだ。役者の女房、しかも女形だものね。片や武士の娘だもの肝は座っている。かっこいいのだ。並行して2人の役者の女房との繋がりも好ましい。幕引きに、あぁ・・やっぱりとは感じたが好みのラストでもあった。初めての蝉谷さん、存分に楽しんだ次第。

2022/11/24

とん大西

いい話、いい幕引き。夫婦の有り様は十人十色。厳しくしつけられた武家の娘・志乃が嫁いだのは新進気鋭の女形・燕弥。芝居の時だけでなく普段の生活も女言葉に女の仕草、そして女の装い。四六時中、役者として女に漬かる男の女房となった志乃のほろ苦い愛。相性というか合わせしょうというのか。奇妙な夫婦の暮らしは小競り合いやすれ違いさえ二人の絆を確かなものに変えていく。志乃の覚悟に燕弥が応えたのか、燕弥の想いに志乃が寄り添ったのか。『おんなの女房』…正しくその通り。良かったです。

2022/02/26

タイ子

蝉谷さんの文章が好き。前作「化け物心中」も歌舞伎ものだが、今回も武家の女性が歌舞伎の女形の元に嫁いだ後、夫婦の行き先を物語る作品。女形の燕弥は舞台を降りてもずっと女性の姿。その美しさに女房さえ憧れる。よく考えれば、私なんぞを女房にして何の得がある。そうなのか、女性の一挙手一投足を見るには女房なのか。女房の方はそれを見据えたうえで燕弥の仕草から女を学んでいく。彼女を後ろから支える歌舞伎の女房たちの存在が面白い。世間かちょいとずれている夫婦の関係は次第に感動へと変わっていく。途中、歌舞伎演目が入るのもいい。

2022/07/27

のぶ

歌舞伎役者の女房はいつの時代も大変なのだなと思いながら読んだ。江戸、文政の時代。喜多村燕弥は江戸歌舞伎の花形役者で評判の女形。そこに嫁いだのが、主人公で武家の娘の志乃。芝居の世界を全く知らず、戸惑いの毎日を過ごしている。少しでも良い女房になりたくて努力を重ねる。燕弥はもてるのでそちらの心配も欠かせない。そんな志乃の生き方に同情しつつも応援したくなる。作中には善吉という芝居の事を教えてくれる燕弥の奥役も登場し志乃を支える。今の時代も梨園の世界は大変だと言われるが、志乃の成長に感動する事必至だった。

2022/02/15

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