アナベル・リイ
アナベル・リイ / 感想・レビュー
starbro
小池 真理子は、新作を数十年に渡ってコンスタントに読んでいる作家です。著者の最新作は恋愛幽霊譚、雰囲気は味わいましたが、傑作ではありません。「アナベル・リイ」が、エドガー・アラン・ポーの詩だとは思いませんでした。 https://www.kadokawa.co.jp/topics/8148
2022/08/14
パトラッシュ
あまりに激しい愛に嫉妬した天使に殺されるアナベル・リイを舞台で演じた千佳代は、実生活でも男では飯沼を、女は悦子を愛した。飯沼と結婚し悦子を親友にできて幸福の絶頂にあったが、ポーの詩と同じく急死してしまう。魂が引き合うほど愛したかったのに引き離され淋しい墓に埋葬されてしまった千佳代は、死霊となって悦子の前に現れる。飯沼に気のあった多恵子と順子を消し去り、自分が愛した2人を結びつけて無念を晴らそうとしたのか。ただ、明らかに妊婦である装画は飯沼の子を産めなかった千佳代の肖像であり、悦子の妊娠を許さなかったのだ。
2022/11/02
青乃108号
哀しい女の幽霊譚。生前の彼女は薄幸で、人を好きになるのも愛する事もただただ不器用で一生懸命で。たった一人友達になれた女と、たった一人愛した男の傍を死んだ後も離れられず、漂い続ける。哀しい女の幽霊譚。【アナベル・リイ】の芝居を必死で演じ切って、大根役者と酷評されて。たった一人愛した男と結ばれてこれからという矢先に病に倒れそのまま急死。彼女は男と女の傍をいつまでも去る事が出来ず傍に居続ける。ああ、なんと哀しい女の幽霊譚。静かな、静謐な読後感が何とも言えず良かった。
2023/02/09
ちょろこ
淡い、美しい一冊。居る、ずっと居る。怯える、震える。その繰り返しの瞬間を淡く美しく表現した怪奇の世界。ちょっとした情景描写がスッと沁み込んでくるのを味わえる。そしてスッと背筋に入り込む微風のような怖さ。もう静寂と共にその世界しか存在しないような感覚にさせられる。無邪気だった彼女の心が見えた時、今度は仄かなせつなさがスッと胸を撫でる。これが彼女なりの想いの漂わせ方、遺し方、縛り方なんだな…と。まるで有終の美を飾るかのような微笑みを感じ、扉を閉めるしかない抗えない恐怖と美で落とし込んでくる読後感がたまらない。
2022/09/27
とん大西
湿っているようでいて渇いているようでもあり…。なんとも気だるい読み味。が、それはそれで嫌いじゃない。若くして病死した知佳代の亡霊。恐怖ではあるが、同時に淡く儚く甘美すら招く。悦子が手にした幸福と不幸。年月を経て恐慌は妖艶に昇華する。
2022/10/01
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