幽霊絵師火狂 筆のみが知る
幽霊絵師火狂 筆のみが知る / 感想・レビュー
まちゃ
幽霊絵師・火狂と、居候先の料理屋「しの田」のひとり娘・真阿。思いを残してこの世を去った者の執念と、身勝手な人間の業が引き起こした怪異の謎を二人が解き明かす怪異ミステリ。恐怖ではなく、もの悲しさを感じる物語。秋の夜長にちょっと異世界に思いを馳せる読書でした。
2022/11/11
紅はこべ
これは近藤さんの新シリーズになりそうかな。まだ江戸の気配が色濃く残る維新の世の大阪が舞台。謎解きミステリであり、少女の成長物語であり、芸術家小説でもあり。事件は陰惨なものが多いが、少女と画家の関係がほっこりするので、後味は悪くない。
2022/12/28
のぶ
ミステリーの要素は薄かったが、面白い絵画小説だった。時代は明治初期。主人公の真阿は料理屋「しの田」のひとり娘で十二のときに胸を病んでいると言われた。以来外出は控え部屋にこもって本を読む毎日が続く。ある時「しの田」の二階に、有名な絵師の火狂こと興四郎が居候をすることになり、真阿との交流が始まる。興四郎は怖い絵を描くだけではなく、普通の人には見えないものが見えているようだった。真阿の健気さと興四郎の絵に対する情熱がとても良い。絵を実際に見られないのがもどかしいが、怖さはなく人情が前面に出ている印象だった。
2022/07/05
みっちゃん
この世ならざる者の姿が視える絵師と、その絵に何かを触発されてその因縁を夢に視てしまう少女。二人が出会い、解き明かしていくことになる怪異は恐ろしい、というよりは悲しく哀しく、そして優しい。特に「自分はひとを愛することができないのではないか」と悩み、亡き妻が遺した息子を手放そうとした若い父親が、ある事件をきっかけに自分の本当の気持ちに気がつく『悲しまない男』がじんわり、と胸に沁みた。この終わり方は続きを期待してもいいのかな。楽しみに待つとする。
2022/09/27
Karl Heintz Schneider
いつも楽しみにしている近藤史恵さんの新刊だが、今回は珍しく時代物、なおかつファンタジー。最初は少し抵抗があったが、読み進めていくうちに、徐々に近藤ワールドに取り込まれていった。幽霊話でありながら、それほどドロドロしたものではなく、人の遺された想いが重点的に描かれていた。ただ、近藤ファンとしては時代物はちょっと・・・。いつも通りの物語の方が良かったかな。
2022/08/14
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