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吸血鬼 (角川文庫)

吸血鬼 (角川文庫)

吸血鬼 (角川文庫)

作家
佐藤亜紀
出版社
KADOKAWA
発売日
2022-08-24
ISBN
9784041117804
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吸血鬼 (角川文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

19世紀半ば、ポーランドの辺境ガリチアの地がこの物語の舞台である。佐藤亜紀が得意とする西欧の歴史を題材とした、一種の稗史小説である。西欧史の断面を語るなら、フランス革命とかナポレオン戦役にすればよさそうなものだが、佐藤亜紀はあえてこんな地を選ぶ。作家的慧眼だろう。オーストリア帝国の代理人として精一杯の善政であろうとする、ゲスラー夫妻の善良。ポーランドの士族にして詩人のクワルスキの夢想。そしてルテニア・カトリック司祭の正統。彼らは皆等しく村人たちの前には余所者でしかない。そのあくまでも頑健な村人たち。⇒

2024/06/06

sin

16世紀末~17世紀の東欧は貧困であった。ルネサンスの啓蒙思想に縁を持たない文盲農民、そのうえ異端審問を行わない宗教的な理由からも吸血鬼信仰が根付いた。そうした背景をもとに組み立てられたパワーバランスの物語だと感じた。領主の力、役人の力、農奴の力、夫の力、妻の力、迷信の力、宗教の力、そしてかそけきは詩の力、理知的に執り行われる迷信に満ちた儀式の所詮は気休めで、現実の災禍は現実に訪れる。郷に入って郷に従えば正気の儘、狂気に堕ちていくが、最後は領主の青臭いアジテーションを農奴の損得をわきまえた正論が撃ち破る。

2022/09/01

コーデ21

久しぶりの佐藤作品(でも実は再読^^)前回は単行本で読了、今回は文庫本で😉 《オーストリア帝国の支配下にあるポーランドで繰り広げられる、人間の本質と恐怖の根源を炙り出す恐ろしくも美しい物語》しばらくご無沙汰していた亜紀ワールド、硬質な文体でありながらもユーモア感じる話運びにグイグイと惹き寄せられ最後まで一気に読了。博覧強記な佐藤さんならではの世界観が素晴らしい✨『バルタザールの遍歴』や『ミノタウロス』同様、何度でも読み返したくなる作品です。

2024/01/07

ベル@bell-zou

また吸血鬼だなんて怖い話を…などと思うことなかれ。この物語には所謂ああいった類の吸血鬼は現れない、表向きには。不審死の原因が吸血鬼(ウピル)か否かは問わない。大事なのはその忌まわしい死を断つこと。村を治めるため冷徹に事を進めるゲスラーにもやがて課される陰惨な儀式。引き換えに得た彼の威信は哀しく皮肉だ。地主の力を誇示すれば百姓は理屈抜きで従うと思った詩人クワルスキの甘さを百姓であるマチェクの父が鋭く突く。学が無いことと賢しさは違うのだ。19世紀欧州、国々がまだ統合と分裂を繰り返す不安定な時代。↓

2022/08/30

Book Lover Mr.Garakuta

【小林書店】【速読】:ある意味難しくて良く分かりませんでしたが、どろどろとした人間の内面を感じ、恐ろしいなと思いました。

2022/10/05

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