忍法剣士伝 (角川文庫)
忍法剣士伝 (角川文庫) / 感想・レビュー
W-G
中学生の考えそうな下ネタが大衆娯楽小説としてきちんと昇華…しているかどうかは読んだ人次第笑。名だたる剣豪が、どんな白熱した命のやり取りを繰り広げるかと思えば「あ、ああ…」と聞きたくもない呻きを洩らして次々退場。インパクトは絶大。主人公の京馬が忍術を駆使して活躍する場面も少なく、「びしゃるな如来」の衝撃だけで忍法帖を冠している。ラストはどう畳むのかと思っていたら、なかなかに突き抜けた展開で、剣聖二人に唖然。あらすじからは『魔界転生』系統と見せかけて、実は『伊賀忍法帖』の系譜に位置する作品。
2023/04/01
サケ太
何度でも言うぞ。山田風太郎作品は面白い。荒唐無稽な設定ながらも、いつのまにやら史実をなぞっているという構成。今回は舞台設定的な忍法を軸に、男女の組み合わせの比較の妙が光る。襲い掛かるのは十二人の剣士たち。剣士を憎む兄弟子。未来の出来事を先取りしつつも、剣士たちの組み合わせ、その決着の仕方も面白い。新版でると読みたくなるし、せがわまさき先生の画で漫画も読んでみたいわね。
2021/10/30
のれん
忍者たちが巻き込むのは12人の最強の剣客たち。 流石に名剣士に突飛な設定はつけられんか、と思いきやそこは山風作品。ぶっ飛び忍法を果心居士より授けられ、誘惑した最強同士がぶつかり合う。 物語としても姫に揺れる二人の忍者の心情変化は繊細ながら行動はダイナミック。互いを思い合うからこそ男達は戦うのだ。 一方12人の最強剣士の中でも塚原卜伝、上泉信綱は別格扱い。まぁ剣聖であり、今回の表舞台の主役たる北畠具教の事を考えてもこの二人がトリを飾ることに異論はない。ラストも歴史の整合性を考えた上で読めない展開で面白い。
2021/11/28
河内 タッキー
35年ぶりの再読。当時は夢中で読んだ記憶がある。居合と言えば座頭市しか知らなかったが、林崎甚助や片山伯耆守といった人物を初めて知った。両者の対決の結末はよく覚えている。とは言え、それ以外は完全に忘れているので、楽しく読むことができた。ただ今回再読して感じたのは、風太郎らしからぬ何となく読みにくい文章だということ。この作品は他と比べ異質な印象を受けた。しかし何だかんだ言って結末は風太郎らしい衝撃の展開。さすがだ。
2022/03/16
hirokazu
忍法を触媒として、高名な十二人の剣士を相戦わせた作品。山田氏の最高傑作のひとつ「魔界転生」は、このアイデアを発展させた物かと思ったが、「忍法剣士伝(原題『忍法不死鳥』)」は1967年連載開始、「魔界転生(原題『おぼろ忍法帖』」は1964年に連載が開始されてるので、これは考え違い。「忍者の話と、剣豪たちの過去の話が、あまり有機的に溶け合ってないので評価が低いようだが、C(作者の自己評価ランク)というほどつまらなくはない。」(日下三蔵氏。「GQ」1995年3月号「特集 山田風太郎の奇想天外SF界」より)
2022/01/18
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