あわのまにまに
あわのまにまに / 感想・レビュー
ヴェネツィア
吉川トリコは初読。この本を読むまでは名前も知らなかったのだが、これまでに既にかなりな著作があるようだ。さて、本書だが、最初はライトノヴェルかと思ったが、どうやらそうではなさそうだ。純文学の範疇に入れようか、エンターテインメントに分類しようか迷うような文体と位置づけである。6つの短篇が10年ごとに遡る形で描かれ、トータルには長編となる構成。全体としては、この女系家族の来歴が語られるのだが、時間軸を逆にしたことの効果がはたしてあったかは疑問である。しかも、語りとしては冒頭の木綿(小学校3年生)のものが⇒
2024/03/17
mae.dat
2029年から始まり、章を重ねる毎に10年遡る6話。この構成、絶対何か企んでいるじゃん。と。第1章の始まりでは、登場人物と簡単な関係が記されていて、超親切設計( ˘͈ ᵕ ˘͈♡)。と思ったんですけれども。以降の章には付いておらず(´๑•_•๑)。あった方が絶対に良いと思うんですけど。蛇足なのかなぁ。10年遡るとね、関係性とか変わってしまっているから。そう登場人物は限定的ながら、人間関係がめたんこ入り組んでいるよ。家族・血縁関係とかその在り方なんかもね。そして人の想いの複雑さと侭ならなさよ。
2024/06/04
hiace9000
益子いのりという不可解で奇天烈な女性を軸に、「逆」年代記で家族の歴史を遡り、埋め込まれた謎が紐解かれていく。家族という共同体が孕む因果とも思える事実、家族故に秘匿された不可触の真実。10年毎に語り手を変え、現在の因が齎す未来の果を、別視点から逆再生し辿る絶妙の間。あえてすべてを語らず、泡沫の如く意識の外に消えていった空白の間こそが読み手の想像を掻き立て、登場人物の迷いや苦しみ、葛藤や悲しみを雄弁に物語り始める。独特の時間に支配された読書時間の後、いのりの真実を知るのは読者のみと気づき、再び作品と溶け合う。
2023/05/29
ヒロ
過去に遡って物語が進んでいく形で、作中に出てくる色々な伏線が回収されていきました。その度に驚きがあり、どんどん読み進めていける感じで面白かった!後、考えさせられる場面が沢山あり、今自分の中にある価値観はどれほど狭いのかと思い知らされました。でも作中に出てくる誰もが必死に自分の人生を生きて、その中で生まれる愛や友情等を凄く丁寧に書いた作品だったと思います。
2023/09/04
そら
姉妹2組の家族の50年にわたる逆クロニクル物語。10年のスパンだと年代がはっきりと変わり、この家族の密やかな秘密がだんだんハッキリと姿を現していく。その真実を知りたくて、遡るごとに頁をめくる手を止められなかった。薄々感づいていたことが輪郭を持ち、「ああ、やはりそうなのか…」と腹落ちしたときには最後の頁だった。人には生涯抱える秘密があるとすれば、こういうことなのかもしれない。発想と展開がとても面白かった。
2023/07/06
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