死神の矢 (角川文庫)
死神の矢 (角川文庫) / 感想・レビュー
紫陽花
昭和21年に書かれた作品とのことです。まず、「死神の矢」。弓で標的を射抜いた者を愛娘の婿に…。そこで数々の事件が発生していきます。現代でも読みやすいですが、男尊女卑的な表現がところどころ出てきます。時代の移り変わりを感じました。次は、「蝙蝠と蛞蝓」。超々短編。でも、予想に反して面白い作品でした。短い中でも作品のエキスが詰まっていました。
2022/08/20
二分五厘
三人の求婚者に弓勢比べをさせて、見事ハートのクィーンを射止めた者に娘を嫁がせる……考古学者にして奇行の男・古館博士が考案した婿選び。イベント後に自らの放っていた矢で殺されたのは、婿選びの敗者となっていた男だった。美女に群がる三人の求婚者(クズ)、どんな手を使ってもそれを阻止したい関係者(多すぎる容疑者)、そして奇抜で理不尽なイベント。もう事件おこってくださいの状況ですね。皆さん弓術スゴすぎ。安定の殺人防御率の低さを誇る金田一さんですが、併録の『蝙蝠と蛞蝓』ではなんと事件が起こる前に解決するという離れ業を!
2023/07/26
MATHILDA&LEON
『3人のうち、50メートル先の的を矢で射ることができた者を娘婿とする』なんて突飛な発想から始まる『死神の矢』だが、その裏にある真相と、それぞれがそれぞれを想う気持ちを知るとき、静かな哀しみとある種の感動を覚える。 『蝙蝠と蛞蝓』は非常に超短編ではあるが、金田一耕助が完璧な端役の位置にあるのは珍しいし、人を蝙蝠のような男だとか蛞蝓のようなジメジメした女と喩えるあたり、この物語の主人公の人柄が良い味を出していて面白く読めた。2作の対比が素晴らしい。
2023/06/06
うーちゃん
一人の美女と、その婿の座をめぐって争う男たち。やがて起こる殺人。←この構図がお好きな巨匠。真相の感じ含め、「女王蜂」に似た雰囲気を味わえる中編だった。有名作と似ていると、まあそれなりの評価、ぐらいでとどまってしまいがちだけど、金田一が"髭を剃る順番"に着目するところなど なる程と思わせる細かな推理も良かった。もう一つの「蝙蝠と蛞蝓」は短い作品だが、金田一がほぼ見た目だけで忌み嫌われた挙げ句、殺人犯に仕立てられそうになるというユーモアミステリ(笑)。一風変わっていて楽しく読みました。
2022/06/26
凛
『死神の矢』『蝙蝠と蛞蝓』が収録される本作。『死神の矢』は、金田一耕助と関わりのあった考古学者の古館、その娘の早苗の婿選びとして三人の男性の間で弓勢比べが行われ、その婿候補達が次々と殺害されていく。被害者三人皆同じようなクズさで、むしろ事件を起こした犯人に同情してしまうような物語だった。『蝙蝠と蛞蝓』は、短編ながら今までとは異なり金田一耕助の住む部屋の隣に住む学生の視点から描かれたユニークな作品でした。事件の起承転結もしっかりしており、面白かったです。
2024/10/26
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