毒の矢 (角川文庫)
毒の矢 (角川文庫) / 感想・レビュー
takaya
著者の後期の作品二編が収められています。謎解きにびっくりさせられることはなく、著者の全盛時代の作品の迫力はありません。それでも、やはり物語としては面白く、一気読みでした。なお、『毒の矢』は、女性の同性愛に対する、今日では考えられない差別用語に満ちていて、数十年前の日本の社会について考えさせられました。
2022/08/26
coco夏ko10角
金田一耕助シリーズ。 『毒の矢』黄金の矢と名乗る密告上があちこちの家に…。犯人はやりすぎたな。最後はなんだか爽やかだ。 『黒い翼』「七人の友人にたいしてこれとおなじような黒いハガキを出さないといけません。さもないと…」な不幸のハガキがあちこちに、そして一年前に亡くなった女優…。女優の秘密そうだったのかと。
2023/05/17
nishiyan
表題作と『黒い翼』を収録。『毒の矢』は緑ヶ丘一帯にばら撒かれた黄金の矢を名乗る怪人物からの奇怪な密告状の相談を受けた金田一耕助が密告状に端を発した殺人事件に挑む内容。被害者の哀れさとともに残された者へ言及する後日談が厚めに語られているのが印象的だった。犯人は二匹目のドジョウを狙って怪文書を撒いていたのなら許しがたい。『黒い翼』は映画監督に招かれた金田一耕助が不幸の葉書とある映画スターの死にまつわる殺人事件に巻き込まれる内容。眼前での毒殺に闘志を燃やす金田一がスターの死の真相も解き明かすのだから面白い。
2023/01/26
マーブル
『市川崑と『犬神家の一族』』で市川・金田一は「天使」として事件関係者の前に立っていたとの記述を読み、では横溝の作品自体に登場する金田一はどう描かれているのか確認したくて本書を取り出した。読んでみるといわゆる岡山もののような陰惨な血縁にまつわる事件ではないせいか、あるいは都会を舞台にしているためか、耕助の態度も何だか軽め。よれよれの姿や、髪をボリボリかく癖はいつもどおりだが、笑い声とそれを上げるタイミングがどうにも「あっはっは」と軽い。人事不介入の天使というより、イタズラ好きのおせっかい妖精といった雰囲気。
2024/08/25
餅屋
昭和31年春の金田一探偵、高級住宅街である世田谷区緑ヶ丘を舞台とした恐喝ものの連作▼黄金の矢と名乗る謎の人物からの奇怪な密告状。被害者の背中に無気味なからす羽根の矢が深々と刺し貫いて▲短めの長編ですが、きちんと推理しています。郊外と描写される新しい町、調布市か目黒区か高級なら後者がモデル?戦後復興期の新しい人間関係の中で起こる事件。都会ものとも違う明るい金田一でした■「黒い翼」こちらは短編、映画スターたちが巻き込まれる事件現場がこの町。表題作と同時期ですが、いつもの何もしない暗い金田一ですね(1956年)
2023/01/20
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