火喰鳥を、喰う (角川ホラー文庫)
火喰鳥を、喰う (角川ホラー文庫) / 感想・レビュー
オーウェン
横溝正史のミステリー&ホラー大賞の作品だけど、巻末にある通り怖いと思える場面がない。 一応ホラーだろうなと思える描写はあるが、表面的なだけで心底という恐怖は感じなかった。 物語の入りは悪くなく、戦争によって死んだ死者の日記が見つかり、その死者の墓が荒らされ、徐々に登場人物たちの周りが侵食されていくという展開。 表紙の火喰い鳥はインパクトあるが、章ごとの終わりが脅かすだけで、次に繋がらないのは意味があるのかどうか不明瞭。 ラストは悪くないだけに、後の作品に期待といったところ。
2023/12/20
キナコ
怪異というか、個人的にはSFに近いかな。いわゆるパラレルワールドな感じ。叔父が戦争で亡くなったはずなのに、もし生きてたら…少しずつおかしくなっていく世界。誰の発言が正しくて、誰が間違っているのか。ヒヤリとしたホラー感。明確には書かれていない、死後の叔父の亡骸など、深読みが出来る部分が多く面白かった。何が正しいといえるのか。初の作者であったが、今後も期待。
2023/09/17
シキモリ
単行本の頃から気になっていた作品。ホラー小説は普段読まないが、本書は<横溝正史ミステリ&ホラー大賞>受賞作ということもあり、てっきりホラー寄りのミステリー小説だと思っていたら、実際はホラー寄りのファンタジー小説だった。ホラーなのに怖くないという選評もあったようだが、確かに頷けるものがある。それはミステリー仕立ての淡々とした筋運びの所為かもしれないし、戦死者の怨念という重厚なテーマが後半で有耶無耶になった所為かもしれない。賛否両論ありそうなラストだが、ファンタジーは何でもありと言ってしまえばそれまでだろう。
2022/11/20
じゅむろりん
信州南部の古民家久喜家の息子雄司と一つ年上の妻夕里子。不穏の始まりは、墓石に刻まれた大伯父貞市の名が人為的に削られていたことと、その貞市が戦死したニューギニアから日記が発見され新聞記者を経由して実家に戻ってくること。日記から読み取れるのは「ヒクイドリへの執着」だが、もう一つ唯ならぬ執着が、じわじわと現代の久喜家を蝕んでいくホラーでありミステリ。なんですが私はファンタジー色を強く感じました。夢の中での貞市の体験と歴史が少しずつ変えられていく不気味さ。何より雄司と夕里子の運命が悲しい。不穏さだけが残ります。
2024/04/27
ひろ
太平洋戦争で戦死した大叔父の日記が発見され、日常が侵されていく。続く異常な出来事の根源が何かわからず、不安定なままで置かれる。挟まれる悪夢が加速させる。ミステリなのかホラーなのか。謎を抱えたまま読み進め、中盤で明らかになる物語の構造。予想外の切り口で面白かった。一見すると分離しそうな要素が、巧みにまとめられている。読み始めに想像していたものとは違ったけれども、意外性を楽しめる作品だった。
2023/08/15
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