刀伊入寇 藤原隆家の闘い (角川文庫)
刀伊入寇 藤原隆家の闘い (角川文庫) / 感想・レビュー
ちょろこ
平安貴族、藤原隆家の活躍を描いた物語の一冊。第一部、二部の構成で、大河ドラマを振り返りながらサクサクすすむ。お年ごろもあってか、血気盛んな藤原隆家の人物像がなかなかの味わい。しかし、ここでも藤原道長は誰が見ても嫌な人なのが笑えた。紫式部、清少納言ももちろん登場。隆家との絡みがなんだか新鮮。安倍晴明の予言から異民族の襲来を討つ刀伊入寇まで、そのストーリーの流れも良かったな。ほんのり幻想的なシーンも平安時代らしくて好き。こういう辺境の地での活躍という支えあっての日の本、中枢だったんだと思うとなんだか感慨深い。
2024/11/15
hiace9000
古来より外敵にさらされてきた我が国の史実を元に、元寇以前の外敵『刀伊』との知られざる闘いが描かれる。葉室作品といえば「静中の動」、人の内奥の繊細なる"言はで思ふ"心情や、閉塞感満ちる武家社会の濃密な人間関係と封建の世の不条理との葛藤・苦悩描きが特長かと認識していたが…本作はその対極にある活劇成長譚! 荒ぶる心をもつ異端の平家公卿藤原隆家は貴族間の政争に巻き込まれ太宰府へ配流。そこで真の「強い敵」と対峙し立ち向かって行く。栄華を極める道長の雅なる光と対をなす、隆家の泥臭くも熱い光に葉室美学の輝きを観るのだ。
2023/03/26
ふじさん
葉室麟が書いた異色の伝奇小説仕立ての作品。「刀伊入寇」は、平安中期、荒くれ者と知られた藤原隆家が安倍清明の予言により異民族・刀伊を迎え撃つ様をダイナミックに描いた力作。藤原道長との熾烈な政争を経て、大宰府に赴いた彼を待っていたのは、刀伊の襲来だった。隆家の知られざる戦いのシーンは圧巻の面白さだ。男たちの権力闘争に明け暮れる中で、翻弄された人生を送る女たちの辛さや苦しみを宮仕えの立場で身近に目の当たりにした清少納言や紫式部の存在が、物語に深みを与えており、興味深い。歴史の真実が詰まった読み応えのある作品。
2023/12/29
ケイト
平安貴族らしからぬ隆家は、昔からさがな者(荒くれ者)と呼ばれていた。伊周のように雅ではないが、人とのコミニュケーションをとるのが上手い。朝廷内の権力争いには興味がなく、太宰府赴任の時「刀伊入冦」で地元の豪士をまとめ国難に立ち向かった。この場面… 大河ドラマでナレーションで終わるのではなく、是非やって欲しい。それにしても侵略者を防いだのに、恩賞は必要ないと言った行成と金任には呆れた。上の人が現場の功労を称えないなんて…さすがに実資はそれは良くないと言ったようだ。
2024/06/24
がらくたどん
「ここまで外戚狙いの内輪もめ一辺倒に煮詰まったら貴族政治は終わるよな」と武士の台頭に納得しちゃう「暴れん坊貴族」伝♪都に居たら「さがな(荒くれ)者」だが眼前に強い敵・背後に護るべき民を置いたら勇気凛凛一歩も引かない頼れる漢。九州出身の葉室さんらしく敢えて外敵襲来に怯える九州で「もののふ」を束ねる道を選んだ中関白家の熱血次男藤原隆家の波乱の半生を描く。目次からして勇ましい。「龍虎闘乱」に「風雲波濤」看板通りに面白く、日本にとっては外敵の刀伊の苦渋・身分を超えたロマンス・中央の怯懦と全方向抜かりない。お見事♪
2024/07/14
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