月神 (角川文庫)
月神 (角川文庫) / 感想・レビュー
ふじさん
月神とは、夜明けと共に昇る陽を先導する月。幕末と維新の時代に、月神となる志を持った二人の武士の物語。「月の章」:志士として福岡藩の筑前勤皇党の中心人物であった月形洗蔵は、五卿動座と薩長和解に尽力したが、最後は乙丑の獄で斬首。薩摩や長州で目線で語られる幕末・維新史が多いが、福岡藩にも語り継ぐ歴史があることを知り、興味深く読めた。「神の章」:刑死した洗蔵の思いを引き継ぐ月形潔を主人公に、明治政府の一員として樺戸監獄の典獄として牢獄建設の推進の尽力する姿を描いた内容。苦難の連続の日々、大変さが分かった。
2024/11/14
coldsurgeon
幕末動乱期を薩長の志士たちの活躍で描くのではなく、時代に翻弄されたかのような福岡藩の志士の苦悩を描くことにより、日の目をみなかったかもしれない人物を際立たせている。月形潔という幕末から明治中期に生きた一人の官吏が、思い悩むのは、遺されれ生かされていくことの辛さを伝えたいのだろうか。正義を貫こうとすれば、それを遮る者は現れ、取り除いても、逆に遮られても、恨みは生じる。恨みを報いあって、最後に生き残った者がすなわち歴史上の正義なのかもしれない。
2023/04/07
水さん
政争に敗れれば罪人となり、かつての罪人が為政者となった維新の時代は、志の強さが生きる力ですね
2023/08/05
こけこ
幕末、維新の頃の薩摩、長州以外の話に興味を持った。激動の時代の憂国の志士の話。歴史は勝者の都合のいいように書き換えられてしまう。本当の正義って何だろう?
2023/11/16
きさらぎ
全体のメインは月形潔だが、幕末を舞台に、尊攘派志士の従兄弟、月形洗蔵を書いた月の章と、明治政府の役人として北海道で監獄建設に尽力する潔を書く神の章の二部構成を取る。 興味深く読めはするんだけど、これがこの作品の完成形なのかなぁ、という疑問はあるなぁ。神の章を書くための月の章なのだろうけど、それだけに「前号までのあらすじ」というか、前置きを延々読んでる感じになるし、神の章は神の章で潔の思考がすごく言葉に頼って理屈っぽくて、いい話なんだけど何となく窮屈で小説読んだ感興を削ぐ。ちょっと惜しい印象が残った。
2023/09/16
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