純白の夜 (角川文庫 み 2-3)
純白の夜 (角川文庫 み 2-3) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
この小説は、「婦人公論」に連載(1950年1月~10月)されていたもの。時に三島由紀夫25歳。物語の主要な舞台は、戦後復興がまだ十分になされてはいない東京。主な登場人物は36歳の男が2人(恒彦と楠)と女が1人(恒彦の妻・郁子)。3人の心理(恒彦のそれはあまり詳らかに書かれてはいないが)の綾が物語を織りなしていくのだが、郁子のそれはまことにわかりにくい。おそらくは郁子自身にさえわからなかっただろう。エンディングは、半ばは予想がつくものの極めて劇的だ。なお小池真理子の解説は、この小説と三島の本質を衝いて見事。
2012/10/14
優希
面白かったです。一言で言えば不倫の恋なのですが、その想いはセレブならではのプライドのある恋のように見えました。最初は静かにくすぶる情熱のようで、お互いに相手に飛び込むことができなかったのに、気がつけば熱く燃え上がってしまう。「惚れたら負け」と思いつつ、駆け引きをしているのに、いつしか本気になっていくのが恋のいたずらといったところでしょう。巧みな心理描写や、不倫を「スポーツ」と例える独特な表現に引き込まれました。
2017/02/02
じいじ
何はともあれ、面白い恋愛小説だ。これが三島由紀夫の25歳の作品だというのだから驚嘆する。解説の小池真理子に言わせると「怪物的な才能だ」そうである。まず、主役のキャラ設定が絶妙。鷹揚な銀行マンの夫・恒彦と13歳年下の妻・郁子、そして恒彦の大学仲間で病弱の妻をもつ楠の三名だ。筋立てはシンプル…初めて会った郁子に楠が一目惚れ。それを手玉に取る強かな郁子の心の変化を丹念に追った物語。夫が大好き、でも何か物足りない。だから、楠に何かを求めてしまう。どう心の裡を読むのか、奥が深い。もう一度読み直してみたい小説です。
2019/12/15
キムチ
三島、25歳の観念的世界。昭和25年の空気だろうな。スノッブとは一般的凡庸な人間としては斯様な戯曲を味わうのも学びの一つに感じる。壮大な悲劇とは受け止められなかったが彼が頭の中で「実態なき虚構」を組み立て始めた秀作というのだろうなと受け止める。巻末解説は小池さん。終始「彼女の顔を想い、へぇ」という感触…ちゃかす気はないけど円地さんレベルの方の文の香りがした。彼が好んだバルザックを「超える」卑俗から悲劇への高まり…うーん、意味不明。もともと、バルザック、私は苦手。面白いと思えなくて。表題「純白」の意味は
2024/09/27
ましゃ
エゴイスト同士の恋を描いた三島流ダブル不倫の物語。これは人によって好き嫌いがはっきり別れる作品だと思う。お互いが不倫している事、惚れているという事を認めたくないため、もどかしい関係が続き相手に不倫の責任を押し付けようとする…共感も感情移入も難しい。それでも25歳の三島由紀夫という、存在の不安に脅かされ続けた作家が書いたという事を考えると納得出来る部分もある。これは三島自身を投影した作品であり、最後には悲劇が待っているが三島らしい自分なりの純白を貫いたからこその『純白の夜』というタイトルなのかもしれない…。
2018/04/30
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