獄門島 (角川文庫)
獄門島 (角川文庫) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
横溝作品の最高傑作として選ぶ人が多いようだが、読み終わって、やはり「悪魔の手毬唄」の方が良いと思った。もちろん本作もすごい傑作であることは変わりがない。方程式の登場には驚くが、作者は薬学を学んだ理系の人であった。1948年作品なので、金田一自身もそうだが、戦争の影が非常に大きな比重をしめている。終戦後の離島での社会の変動を、半ば予想しながら描いたようだ。さて岡山の磯川警部ものには名作が多い。「本陣」と本作のあと、9年後に「毬」が書かれたことも感慨深い。発表とは逆順になったが、次は「本陣」を読みたい。
2020/04/22
青乃108号
金田一耕助シリーズ2作目。「本陣殺人事件」から9年後、大戦に召集された後復員した金田一。戦死した戦友の言葉に導かれ訪れた島で起きる連続殺人。これぞ探偵小説、その物語の展開にワクワクしながら読み進める。そして明かされた事件の真相と、ラストもう一段のひねり。どこまでも悲劇としかいいようのない話なのにサラリと読めるその軽妙な語り口が見事な傑作。何故もっと早く読まなかったか。沢山出ているこのシリーズ、全部読むのは無理そうだけどあと3作程は読んでみたい。
2023/07/27
kaizen@名古屋de朝活読書会
有名な話だけど実際に小説で読んだのは初めて。瀬戸内海の県境の島が舞台。日本の推理小説の古典の一つかも。解説:中島河太郎。横溝が東京を離れた時が2度有り、その時に作風が変わっているとのこと。
2013/09/21
夜間飛行
私にとって推理小説の醍醐味は、殺人事件をロジックとして楽しむことにある。生意気を言うようだが、そのためには空間と会話が欠かせない要素だと思う。空間といえば、ヴァン・ダインの「グリーン家殺人事件」のような洋館が一つの典型といえるだろう。その点、横溝正史は日本の風土の中で和風建築による密室を試みたり、鍾乳洞や塔など、果敢にミステリ空間の可能性を広げてファンを楽しませてくれた。中でも獄門島は見事な舞台設定で、島全体を一つのロジカルな空間と化し、それを利用して当時としては驚くべき大がかりなトリックを仕掛けている。
2013/09/28
bookkeeper
★★★★☆ 再読。金田一の戦友は、日本を目前に引き揚げ船の中で息絶えた。自らが生還しないと3人の妹が殺されると、不気味な予言を残して…。 梅の木に逆さ吊り、伏せた釣鐘の下から覗く振袖の裾など、殺人のビジュアルインパクトが鮮明な傑作。見立て殺人の理由と犯人を明かしていく金田一の謎解きが圧巻。連続殺人の動機そのものが、崩壊してしまう皮肉な結末の衝撃も凄い。古い日本の因襲が、朽ちる間際に引き起こす惨劇…。言葉遣いや時代も含めて、今となっては絶対に書く事が出来ない推理小説ですね。これが読める幸せを噛みしめたい。
2020/05/02
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