女王蜂 (角川文庫)
女王蜂 (角川文庫) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
久しぶりの横溝作品。現在と異なる初代カバー。1975年の10版。ページ数も相違(470ページ)。表紙とタイトルから想像した内容とはやや違っていたが、都会と離島の両方にまたがる物語となっていて、執筆の1951年という時代を濃厚に感じる。長い小説だが、実に読みやすく書かれていて、非常に早く読み終わった。金田一さんが弁護士に依頼されて事件にかかわっていく、というのが「八つ墓村」を連想させる。私立探偵をどのように関わらせていくか、日本では難しいところだろう。非常によかった。他の未読の横溝作品も読んでみたくなった。
2015/08/13
nobby
「すべてはこの部屋ではじまり、この部屋でおわる。……」金田一が現在対峙している事態と十九年前の事件が見事に融合するのが素晴らしい。伊豆沖の地図にものっていないという月琴島を舞台にして、そこに住まう源頼朝の後裔と称する絶世の美女を生む家系を巡る不穏となればどうでも引き込まれないはずがない!時系列や人物視点がほぼ変わらず、展開盛り上がるままに一気に読める。後半100頁での謎解きは少々強引に感じるも、時空を超えて愛憎劇語られた後に用意された微笑ましいラストは嫌いではない。大方は表に出ないあの方に起因するのだが…
2018/05/14
エドワード
伊豆半島沖の月琴島。大道寺家の一人娘・智子は、18歳の誕生日を機に東京の本宅へ移る。旅程中の宿で起きる殺人事件、そして19年前の、智子の実の父の謎の死。金田一シリーズの中で、<愛>が動機となる、女性たちの物語。叶わない愛。小道具も月琴、編み物と彩り豊かだ。東京が舞台の作品は、乱歩ばりに妖しい。「彼女は女王蜂である」謎の脅迫状、そして「こうもりを見た」謎の言葉。市川崑監督の映画では岸惠子と仲代達矢の視線の演技が素晴らしかった。誰もが命を懸けて守るもの。真犯人を明らかにしない結末が暖かい。口紅にミステリー。
2018/03/13
HANA
再読。孤島の名家。ファム・ファタル的な美女。開かずの間。十九年前の謎めいた事件。著者らしい魅力的なギミックが満載されているが、大部分が東京を舞台としている為伝奇度は低め。ただ今回は『八つ墓村』や『三つ首塔』程ではないけれども、第三者からの目線で語られる事が多いので金田一はあまり表面に出ず、というか一種狂言回し的な役となっているように思える。でも物語自体は面白く、エピローグの開かずの間の出来事はほぼ覚えているほどなので。やはりミステリというより巨匠のストーリーテリングを楽しむための一冊みたいな気がします。
2021/01/10
セウテス
〔再読〕私はこの作品を読むと、1978年に映画化されたヒロインの中井貴一の姉貴恵を思い浮かべて仕舞います。島の旧家の娘智子の上京に同行した金田一でしたが、彼女を取り巻く事件の波に巻き込まれていきます。兎に角何処まで物語の世界を作っているのか、横溝氏の精巧なプロットには頭が下がります。この作品は金田一耕輔の活躍を期待して、読むタイプの作品ではありません。密室も在りますがトリックを楽しむよりは、絶世の美女を廻る人間模様の悲哀を描いた作品です。ラストのどんでん返し、落とし処も素晴らしい一風変わった横溝作品です。
2014/10/27
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