阿寒に果つ (角川文庫)
阿寒に果つ (角川文庫) / 感想・レビュー
あつひめ
はじめて読んだのは10年くらい前になるだろうか。真っ白い雪に赤いコート。忘れることができなかった。そして、この小悪魔のような彼女が忘れられなかった。一人の女性とは思えない多面的で、純子を愛した男はみな自分が思われ人だと語る。純子は男たちの目を通しながら自分を愛してる。17歳と言う大人でも子供でもない…魅惑の生き物。どの男との関係よりも姉との繋がりが私には羽布団の柔らかな逃げ場のように感じられた。雪が降る季節を迎える度に雪に覆われた阿寒湖を想像する。赤いコートの後ろ姿を思い浮かべる。
2014/04/18
momogaga
読メ開始以前の既読本。渡辺淳一作品に嵌まったきっかけ。恋愛ミステリーとして読んでいた。
hit4papa
阿寒で自殺を遂げた18歳の女性画家。二十年の時を経て、彼女に想いを寄せていた主人公は、彼女と関係のあった男性たちを訪ね、死の真相を探し出そうとします。札幌を舞台にして、5人の男性、そして姉の回想を通して、人物像が明らかになっていくストーリー展開です。自分を一番に愛していると男性たちに思わせる女性の生き様、そして彼女に翻弄され喪失感を抱え続ける男性が活写されています。ただ、男性たちを魅了し、あっけなく果てた女性の心の底は分かりません。そこは読者の考えにゆだねるということになるでしょうか。
2017/04/10
みんく
数年ぶりの渡辺淳一作品。久坂部さんのエッセイに本書のことが書いてあったので。作家自身の人生を変えたファムファタル、自分を含めた6人の思い出話で純子像が六面体で描かれる。その中で純子の姉、蘭子がやはり最も純子を理解していたようだ。1971年頃に書かれたそうなのでやはり時代の違いは感じるが、多くの男性を虜にしつつ本当に愛しているのは自分自身、生前もその後も上手くセルフプロデュースした女性。今の時代にもありそう。
2018/03/18
ミッキー・ダック
天才少女画家ともてはやされた高校生純子が、雪の阿寒で自殺。20年後、同級生で恋人だった作家が、当時純子が関係していた4人の男と姉に話を聞き、彼女がなぜ死んだのかを探って行く。前段では、4人の男たちが小悪魔的な彼女に憑りつかれ翻弄され裏切られる様が小気味よく展開するのだが、5人目の医者のあたりから謎解きが始まり、姉の話の章で終わる。良く計算された筋書きで一気に読ませた。終章は蛇足の感。本音とウソの見分けがつきにくい女性の怖さが良く出ている。だが作者は、簡単に騙される男の愚かさを愛おしんでいるかのようだ。
2014/08/04
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