白い宴 (角川文庫 緑 307ー4)
白い宴 (角川文庫 緑 307ー4) / 感想・レビュー
zero1
功名心か?それとも必要な医療か?是非が問われた日本初の心臓移植手術を描く。大学生が北海道の海岸で溺れ、病院に搬送。医大で心臓を取り出し心臓弁の不全患者に移植。新聞記者も高校の同級生が看護婦におり、この件を追う。死の判定が正しかったのか、心臓病の患者に移植以外の治療はなかったのかなど疑問が。モデルとなった移植手術時、病院にいた渡辺(後述)が描いているだけにリアル。生命と医療倫理が問われる話題作なのにレビューが22件と少ないのは極めて残念。「小説 心臓移植」として直木賞候補。
2019/07/16
美雀(みすず)
臓器移植って未だにトップニュースに扱われて話題になるけど、肝臓や腎臓がほとんどですよね。心臓を移植するなんて考えられない。日本に前例があったなんて信じられませんでした。一番可哀想なのは溺死した青年でしょう。移植された青年も医師の実験台みたいで家族の気持ちを考えると切ないです。
2015/02/22
hit4papa
昭和43年、札幌医科大学における、日本初の心臓移植手術にまつわるゴタゴタに材をとったドキュメンタリータッチの作品です。著者は当時、該大学の講師で、本作品の発表をもって専業作家になったとのこと。なるほど、医師の視点で臨場感たっぷりの描写ではあるものの、反面、内部告発のような内容です。執刀医の、傲岸不遜な態度と女性的ともいえる心の揺れが綯い交ぜになった心理描写は、科学と倫理の相克を象徴しているのでしょう。ただ、本作品は、読者に問題提起をするまでではなく、ここから感動なり教訓なりを得るのは難しいかもしれません。
2017/04/24
ガクガク
渡辺淳一追悼読書。昭和43年8月札幌医科大で行われた日本初の心臓移植手術を扱ったドキュメント風小説。原題『小説・心臓移植』。当時著者は同大学の整形外科講師で、この世紀の医学的事件を間近に目撃する立場にいた。翌年44年本作を発表した後、職業作家の道を歩むべく上京するわけで、本書は著者の人生の転機ともなった作品。人間の死とはいつなのか、誰が決めるのか、医学の進歩と人間の尊厳とは・・・事件から半世紀近くが経つ今もこれら根源的な問いは決して古びない。手術を執刀した外科医もまた被害者とのつぶやきは正に小説家のもの。
2014/06/21
おさむ
札幌医科大学での日本初の心臓移植を描いた半ドキュメンタリー小説。渡辺さんが作家に本腰をいれるきっかけともなった作品。直木賞の光と影にも似て、読みごたえありました。1969年8月8日の和田移植が社会に多くの影響と混乱を与えたことが日本の移植開始の遅れに繋がった。そんな当時の雰囲気を上手く伝えています。
2014/12/21
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