一歩の距離: 小説予科練 (角川文庫 し 4-14)
一歩の距離: 小説予科練 (角川文庫 し 4-14) / 感想・レビュー
シュラフ
すでに太平洋戦争の敗色が濃くなった頃の予科練における若者たちの物語。国を護るべく思いをもって予科練に集まってきた若者たちであるが、飛行訓練のための飛行機ももはやない。そこでの毎日はパイロット養成のための技術習得というよりも精神を鍛えるための訓練の繰り返し。指導員は戦場で生き残った古参兵で荒くれ者で、訓練の名を借りた”しごき”の日々が続く。個人の人格もなければ、生命すらも軽んじられる狂気の組織である。そんな中、いよいよ戦局は厳しさを増し、若者たちは特攻志願を迫られる。生死を分ける一歩が重たすぎる。
2014/05/07
wearnotequal
特攻に志願するものは前に出よ。 その一歩は今では想像できないほど重いはず。判断できない若者も無理に前へ出た。そんな中での日常の描写は興味深い。震洋は知っていたけどブリキのボートに自動車のエンジンで特攻なんて現代ならテレビのバラエティー様柄。それに有無を言わせず命を掛けさせられた当時の若者も悲惨。
2015/01/18
さるぼぼキング
たった一歩前に出るかどうか、死と確実に直結したその一歩を踏みだす決断を16,7歳の少年にある日突然求める、この残酷さは到底理解できないもの。読んでいてただただ身につまされる・・・ 軍隊の日常もマンガのような苛烈さで、戦中を生き抜いた人も出身階級によって軍隊や戦争に対する認識が異なるのもうなずける。
2013/11/05
sakwai
特攻で死ぬ前に過剰な訓練で殉死させられた者。実際に相当な数いたのだろうか。戦争末期の狂乱の状態とは言え、ここまで非理性的になってしまう人間が恐ろしい。
2010/10/02
あられ
再読 学生のころに読んだ。あの時は出てくる人物に年齢が近かったせいか、自分に重ねて「一歩がだせるか?」と読んでいたように思う。今は年を重ねて、純粋な心の若い世代が、大人から聞かされる、教えられる、与えられるもので、その都度まっすぐに突き進むさまにドキドキした。戦争しに行かない…今の人は何よりもそれを心棒にしてほしい。淡々とその当時の状況を描いた良書だと思う。
2018/01/30
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