寺山修司少女詩集 (角川文庫 て 1-12)
寺山修司少女詩集 (角川文庫 て 1-12) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
短歌、俳句、詩、演劇と多彩なシーンで活躍していた寺山修司だが、今回は「少女詩集」。寺山本人が編集したのか、出版社によるものかは不明だが、タイトルに見られるように、比較的わかりやすい詩を集めている。ここでの詩のタッチは、中原中也の詩にもっとも近いかと思われる。「なみだ」、「海」、「宝石」、「愛」がキー・コード。また、篇中のいくつかの詩は天井桟敷のテラヤマ・ワールドを思わせるものや、「時には母のない子のように」など、カルメン・マキとアンダーグラウンドの時代を彷彿とさせるものもあって今は亡き寺山を偲べるものだ。
2012/12/05
匠
高校3年くらいから強烈な影響を受けた寺山修司の世界。孤独感、愛情への飢餓と裏腹な毒。そんな涙が作った海はまるで母性の象徴のようだ。彼のさまざまな側面を感じられるこの詩集は特にわかりやすく、また今読み返すとキラキラした郷愁と脆さを感じさせる。そしていまだに共感してしまう詩が多い。個人的には、「かなしくなったときは」「心臓」「愛の天文学」「けむり」「みじかい恋の長い唄」がとても好み。
2014/04/09
青蓮
読書リハビリも兼ねて再読。詩は普段そんなに読まないけれど、この詩集は特別。ふとした時に読みたくなる詩集です。ロマンチックでセンチメンタルな珠玉の言葉の数々。「一ばんみじかい抒情詩/なみだは/にんげんのつくることのできる/一ばん小さな/海です」
2016/06/24
masa
君の涙があまりに詩的だからと紙に落としても、滲むだけで手紙にはならなかったのです。涙は水に化学変化し、詩だった証拠を失くしてしまう。さっきまでは確かにことばを含んでいたのに。何かを書きとどめようとすることは、それに似てとても難しいことです。やがて記憶から消されたはずの一行と残されたままの一行が交わり、古びて汚れていくことで人生になるのです。消された愛だけが思い出になる、さよならだけが人生だと言うならば、僕は思い出を捨て、繰り返し読む小説のような世界の涯てで、物語を引き算して最後まで残る君を愛したいのです。
2019/05/20
つねじろう
不思議な縁を感じるこの詩集。16の時に同級生の女の子に手渡され44年後読メの素敵な女性の同級生からまた手渡された。ドラマチックでロマンチックでしょ?まさにそんな詩集。最初に読んだ時言葉の鮮度とリズム、ほとばしる感性と発想の豊かさやその向こう側の孤独に衝撃を受けた。イチコロだったのに悔しさと嫉妬で「どうだった?」って聞いてきた彼女に「好きじゃない」と応え「がきめ!」と言われフラれた。好きだったのに。でこの年になって恐る恐る頁を捲るとその年を取らない光輝く生の言葉達に再びやられた。がきの自分が蘇った。
2016/12/25
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