さかさま恋愛講座 青女論 (角川文庫)
さかさま恋愛講座 青女論 (角川文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
青女は寺山の造語で、青春期にある女性向けのエッセイ、といったくらいの意味。全体のトーンは軽いのだが、その根っこにあるのは、寺山のアナーキーなまでのリベラリズムだ。彼は、徹底して既成のモラルや権威を信用しないのだ。それはもう見事なまでに。その意味で本書は、詩人や歌人としての寺山よりは演劇人の寺山色が濃厚に出ているだろう。「女らしさ、などは存在しないのです」、「愛情は、虚構です」などアフォリズム風の裁断の仕方も小気味よい。また、未来世界ではブタに人間の臓器を造らせるなど、見通しも確かなことを証明している。
2013/06/21
青蓮
寺山修司による女性解放論。書かれた時代のせいか、今読むと古いなあと思うところが結構あって、でもそう感じるのは女性がより社会へ出、「女性らしく」という呪縛から解放されつつあることを示していると思います。書き手が男性であり、私が女性であることで違和感や齟齬があるのも影響しているのかも。だけれどもこの本が書かれた当時はとても目新しく、新鮮に受け止められていたに違いない。男女平等が謳われながらそれとは程遠い現実に日々憤りを禁じ得ません。寺山修司が現代社会を見たら何て言うのか興味があります。
2019/07/24
ねこさん
今朝の天声人語は中原中也の件。中也の自棄の快楽性については抑圧や悲哀と切り離せないだろうし、程度の差こそあれ多くの人が思い当たる感情なのかもしれない。寺山と中也、その「軽やかさ」の異質さがもたらした各々の実生活に漂う空気の差異を想像して目眩がする。雨夜の品定めを想起させるような巻末の対談で、「面倒くさいから結婚しない」と語る寺山。貞淑さの勧めとは「さかさま」というパッケージに隠蔽された、四十代前半の男が抱える欲。そこから切り離せない所から語られた、対象としての女の業が『青女論』とも言えるように思うのだが。
2020/02/08
有機物ちゃん
時代的背景を踏まえながら読む本。第2章『性』のところで妊娠する身体を持つ女側は精神的負担もあるのにたかがセックスだと?と読むのを辞めようかと思ったが、よくよく読んでいくと1970年代でも女性は貞淑さを求められて性経験なんて以ての外と性規範を押し付けられている風潮だったようだ。その流れで女だけが性を抑圧されるのはおかしくないか?という話だった。それでもたかがセックスは乱暴だと思うけど、寺山さんの女性へ既存の価値観を疑え!というインパクト勝負のメッセージなんだろう。すごく過激だから飲み込むのに時間がかかる
2022/09/10
内緒です
寺山修司が人気だった理由がわかった気がする。一緒になったら苦労しそうだけど、惹き付けるオーラみたいのが文章から伝わります。
2011/01/11
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