家畜人ヤプー (角川文庫 緑 334-1)
家畜人ヤプー (角川文庫 緑 334-1) / 感想・レビュー
みも
物凄い作品だ。論駁の余地の無い理詰めの構築でじりじりと洗脳され、アイデンティティーを無理やり剥ぎ取られる恐怖。人生観を揺るがし、おののかせ、道徳観を根底から崩壊させる様な悪魔の如き書である。グロテスク作品と言えば凄惨な遺体描写を想起するが、ここに描かれる残虐描写はスプラッター物とは一線を画す。進化論、哲学、法医学等の広範な見識を披瀝しつつ、学術論文の様な形式で他に類例を見ない悍ましさを淡々と記述する。家畜に焼き印をして食用とし、皮革を剥いで衣服とし、愉悦の為の闘鶏。これら現代の家畜が人間の顔をしていたら…
2016/08/29
シタン
なんとも多面的な作品。まず何よりもSM小説の極北という評価は納得。人体改造や汚物愛好を含む内容は極めてグロテスク。だが、その語り口は恐ろしいほど理路整然としている。作り込まれた設定に基づいて専門用語(造語含む)や知識を過剰に盛り込んでおり、学術書を読んでいるような印象がする。タイトルから察せられる通り『ガリバー旅行記』の影響を受けているのだが、同様に痛烈な風刺がある。そして最後に、文体の特異性。外国語・ルビの多用やフォントいじり(どこかでみたことあるなw)のせいで、実に読みにくい!オススメはしない(笑)
2019/01/17
501
人間(日本人)が肉便器を代表にあらゆる道具にされ、どんな肉体改造も厭わないグロテスクな発想のオンパレード、それを支えるグロテスクで豊富な含蓄を持って展開される精密な論理に圧倒される。しかし慣れとは恐ろしい。最初、身体がぞくぞくするほどの生理的嫌悪感に目を背けたくなる程だが、途中から精密な(頭をひねってしまう)論理にも、現実離れしたイース人の過剰な悪趣味にも退屈さを感じてしまう。ただ、読んだ人になにがしらの変化を残すだけの何かを持っている本であると思う。
2016/05/24
りんご
友さまの発言がMっぽいなあと思った途端、衝動的に読みたくなって再読。白人が貴族、黒人が奴隷、日本人は家畜って言う未来の世界。家畜だから人体改造されたり、ペットにされたり、便器にされたりします。よくぞ色々な利用法を考えたものだ。我々土着ヤプー(普通の生活をしている日本人)に歴史、文化、背景などを伝えるためにページ数は多い。百科事典のよう。馬鹿みたいなこじつけも尊い。私は貴族になって(この尻の下にヤプーを敷いているのだ)と読みつつも、ヤプーになって(この痛みは白神様から与えられた恩恵だ)と感謝した。
2020/09/06
musis
白人が人間、神とされ、黒人が奴隷、日本人が家畜の世界。最悪だった。人種云々以前にスカトロがとても苦手なので、そちらの吐き気を抑えるので精一杯だった。おぞましく恐ろしい。しかし、細かく現実感ある描写に引き込まれた。一瞬我に返ったとき、自分がいる現実がこのヤプーの世界と違うことに不思議な気持ちを持つ。マゾヒズムの極致の大幻想小説、世界的奇書と言われれば確かにそうだとは思う。読み返すことがあるだろうか。でも手元には置いておきたい、作品だった。
2014/11/30
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