少女地獄 (角川文庫)
少女地獄 (角川文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
この作品は構成、文体ともに所謂、戦前期の「探偵小説」なるものであろう。もちろん、だからといってここに探偵が登場してくるわけではないが。作品集『少女地獄』の中では、巻頭の「何んでも無い」が読み物として一番面白いが、読む前の期待を満たしたかというと、やや拍子抜けの感も否めなかった。
2012/02/21
ehirano1
おそるおそる夢野久作の作品に手を出してみました(ちなみにドグラマグラで地獄に落とされたくちですwww)。地獄を書かせるとまあ彼の右に出るのは相当困難。必殺の「書簡体小説」から編み出される独特の読後感には普通とは違う溜息が出ます。しかし驚いたのは、実は書かれていることは至ってシンプル、そう、人間の内在的理論なんです。例えば、「何んでも無い」では他人の評価に固執し過ぎてしまうとその行き着く先は・・・などで大変興味深いです。その意味で、ドグラマグラには沢山の発見が埋まってそうで、再挑戦の意欲が湧いてきました。
2022/12/11
(C17H26O4)
騙されたかったのでしょう?騙されたくて騙されていたんじゃないの。甘美だったでしょう?少女ってね、怖いのよ。大人の女もね。かつては少女だったのだもの。騙す少女のなんてあわれで美しいこと。でもね、特権なの。少女地獄とは少女の陥った地獄とも読めるが、わたしはそうよりも、(蟻地獄のように)少女のつくった地獄に他者が陥ったように読んだ。
2020/12/05
ナマアタタカイカタタタキキ
その圧倒的な文章の密度には感服させられるばかり。これは一字一句落とさず読まねばならないぞ、と、気付けば血眼で文字を追っている。故にあまり気楽な読書にはならなかった──空想、虚構、隠蔽、瞞着、色んな形状の“真ではないもの”が組み込まれている、珠玉の短編集。精密鋳造のように寸分の狂いもない見事な虚偽(明かされてしまう以上それは言い過ぎかもしれない)を目の当たりにした時、人は屡々感動してしまうことすらある。尤も、心を奪われるのは、完全無欠な構造の神殿の如きそれが、大きな音を立てて崩れる、その瞬間かもしれないが。
2020/05/06
Tsuyoshi
表題作を含め3編。特に最後の「火星の女」がよかった。幼少から身体的特徴をネタに苛められ空虚感に満ちていた主人公の少女が聖職者と敬慕された校長の薄汚い本性を知ってしまい凶行に及ぶ話で、最後まで何とか信じようとする少女の純真さが不憫でしょうがないだけに少女の気持ちを踏みにじった校長においては激しく憤りを覚えた。
2018/07/01
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