ねこに未来はない (角川文庫)
ねこに未来はない (角川文庫) / 感想・レビュー
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
猫が苦手な若い詩人は恋に落ちて、若葉の匂いに満ちた4月のある日結婚した。小さなアパートで始まった結婚最初の朝、詩人は新妻に贈る言葉を用意していた。けれど、それは彼女の言葉に遮られた。「何よりもまず、ねこを飼いましょう!」。長田弘さんと奥さまの若き日の結婚生活を綴った物語。新しい家族になった仔猫たち。出ていって戻らなかったり、突然の悲しい別れに見舞われたりする描写には古傷を抉られる気持ちになった。なお、ドキッとするタイトルは「猫の未来が閉ざされている」という意味ではない。作者がほくそ笑む表情が想像できる。
2016/03/08
ふう
読むのをためらってしまうタイトルですが、長田氏の作品だからきっと大丈夫、と手に取ってみました。1ページ目から猫への愛にあふれていました。物語のようだけど、多分「ぼく」は長田氏。猫は自由に生きているように見えるけど、自由に生きるのはなかなか大変で、厳しいこともたくさん。猫への思いも美しいけど、猫のすべてがわかるわけでもなく哀しいこともたくさん。猫好きとしては共感しすぎて胸が痛くなってしまいました。表題作のほかにいくつかの物語もあって、そちらはユーモアと猫の知恵がつまった童話のようで楽しく読めました。
2019/06/30
MICK KICHI
詩人の長田弘さんは、大学生の卒論を鮎川信夫さんで書いたときに評論を引用させて頂いた以来です。「ねこに未来はない」は長田さん夫妻の猫を飼われた体験を童話風のエッセイにした作品で、猫嫌いの長田さんが大の猫好きの奥様の影響で猫と暮らし始め、不慣れながらも付き合った猫たちの可愛さ、習性に愛情を持ちつつ、ある日突然訪れる別れを何度も繰り返しながら感じた心情をコミカルに特に切なく綴っている。タイトルの秀逸さに惹かれた手に取ったが、猫を飼った経験のない自分にも、魅力的な作品でした。
2018/10/10
ダリヤ
詩人でもある長田さんがつづる、ねこと奥さんとの生活。まるで絵本をよんでいるみたいに、夢みたいな美しい表現をされるので、文章をよむのがすごくおもしろくてしかたなかったです。ねことの生活は、夢みたいなしあわせな日々ばかりでなく、しっかりと悲しく冷たい現実がえがかれているので、ねことの生活には、それらがまちがいなく存在するとわかっているからこそ、いとしくてたまらないものだと、感じます。『かわいい仔ねこください、きっとかわいがります』の貼り紙は、とっても名案で、だいすき。
2012/05/27
anne@灯れ松明の火
『児童文学キッチン 』で気になって、隣市書庫から。1話めの「ぼく」は小説の主人公だと(それも外国が舞台の気がしていた)思っていたら、2話目で「吉行理恵さん」が出てきた。「ぼく」=長田さん?と驚いて、袖のあらすじを確認したら「物語エッセー」とあった。ねこについて、ほほえましい描写だけでなく、残酷な描写もあるので、ねこ好きさんに勧めていいのか迷う。でも、長田さんがねこを愛しているのは間違いない。詩人らしい言葉遊びもあり、楽しく読了。長新太さんの絵がピッタリ。
2018/02/26
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