十九歳のジェイコブ (角川文庫)
十九歳のジェイコブ (角川文庫) / 感想・レビュー
メタボン
☆☆☆ 疾走感のある文章は良かったが、唐突な場面転換についていけず、物語にはのめり込めなかったのが残念。殺人の必然性もわからなかった。
2017/07/24
tomo*tin
爆音でジャズが鳴る。振動する空気、安息とは無縁の衝動、セックスとドラッグ、汚濁に塗れた愛、ひた走る絶望、出所不明の憤怒、混沌の中にある一筋の光。その光は希望でも救いでもないけれど、今ここに存在するもの、として痕跡を残す。誰かにとっては掠り傷でも、別の誰かにとっては致命傷となる痕跡を。轟音に窒息しそうになり幾度も眩暈を覚えつつ、私たちは誰もがいつかの19歳を持っていることを知る。やっぱり中上作品は、こわいよ。こわくて、苦しい。
2009/06/16
メルト
セックスとドラッグにまみれ、音楽だけが美しいものとして存在するジェイコブの日々を描いた物語。たしかに美しいはずなのに、読み進めるのは不思議と苦労する文章だった。ジェイコブの日々にはおそらくぼくは経験することのできない不思議な輝きがあったが、そんな中でも抑圧する存在としての父親がいて、ぼくが感じているものと地続きの息苦しさも確かにあった。この作品をきちんと読み切れた気がしないので感想がうまく書けないが、「人間はどうせ血の入ったズダ袋」という言葉が印象に残った。
2020/05/04
ちぇけら
ついにここまできたんだ。殺す殺す殺すという衝動をずっと求めていたんだ。「灼熱の砂漠、熱砂の砂漠」、空は血に染まって真赤な夜明け。青春はセックスとクスリにまみれた便所の水のなかに、オマンコとジャズだけが体に染み入って、頭はクスリで濁る。ここじゃない、ここじゃないんだと手探りで進む狂った頭で。「誰が死のうと殺されようといいじゃないか。どうせ血のつまったズタ袋じゃないか。豚みたいに生きてるんだろ。何にも知らないでただ生きている。吹っとばしてやりたくなるよ」つみあげていく虚構を青春の燃え滓にさせるな。輝け。
2019/02/17
東京湾
「この世界が腹立たしくってしょうがない。この世界はよごれすぎているような気がします」クスリとジャズと性に溺れ、世界に飽いて、砂漠を渇望する青年、ジェイコブ。響き渡るコルトレーン、尽き果てぬ破壊の衝動。正直これはほとんど理解できず、雰囲気に身を委ねるがまま、人物の言動を俯瞰し、情景と臭いとを思い浮かべる、そんな風にして読み進めた。どう解釈すべきなのかな、じぶんはまだ「紀州サーガ」に一冊も触れたことがないので、それらを読んでからまた読み返してみたいと思う。暴力的で退廃的な雰囲気は好きだ。今はそれだけ。
2017/05/12
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