東一局五十二本場 (角川文庫 緑 459-61)
東一局五十二本場 (角川文庫 緑 459-61) / 感想・レビュー
夜間飛行
「便天小僧八之助」(誤字にあらず)は、作者の分身のような放浪癖のある人物が主人公である。本来なら彼の住むべき実家の離れに、イボ八という雀ゴロ(賭け麻雀で生活する人)が勝手に泊まり込んでしまうのだ。主人公はこの男が両親に迷惑をかけないうちに何とか追い出そうとする。放浪癖のある男が居候に悩まされるというのが何とも可笑しい。イボ八を追い出そうとイカサマを教えたり、罠にはめたり…このどこかズレた律儀さは、きっと作者が生きている実感そのものなのだろう。牌図を載せ、一ツモ一打牌に至るまで愉しませてくれるのがうれしい。
2015/05/03
drago @竜王戦観戦中。
久~しぶりの阿佐田哲也。これは初読みかもしれない。 ◆短編9本のうち、表題作が一番よろしくない。だって、ノーテンパイで親が流れないルールで、東一局で役満を上がった親に対し、子の3人が結託して上がり放棄を続けていたらゲームとして成立しないもん。前提条件がおかしくないですか、阿佐田先生? ◆全体としては、風情もユーモアも郷愁もあって、今読んでも十分に楽しめる。流石です。 ◆改めて、全巻制覇を目指すとしようかな…。 ☆☆☆☆
2020/10/29
hirayama46
阿佐田哲也の中期ごろ?の短編集。ヒリヒリした緊迫感のある短編と、ちょっと余裕のある短編が混在しているのでメリハリがあって読みやすいですね。やはり印象に残るのは表題作や「雀ごろ心中」における逼迫感ですが、「麻雀必敗法」あたりののんびりしたなかにも人の心の業が感じられる短編も良かったです。
2020/05/07
...
色川武大と阿佐田哲也はどちらの方が有名なんだろうか。それはさておき、どことなく死の予感に包まれた麻雀・賭博小説集だった。特に表題作、逼塞感、終わりない負のイメージ感じ、もはや幻想小説の域に達していると感じた…。オチもいい。その他も好短編多し。麻雀のルールがわからないと読みにくいだろうが、わかる方はぜひ。
2012/12/12
西村章
この年になってこういうものを読むと、昔はヒリヒリするくらい刺激的だった博奕打ちたちの刹那的な人生観や透徹した死生観に、今はむしろじつにしみじみとした哀感のような味わいを感じ取ってしまうのだから、すぐれた短編というのはじつに不思議で面白い効果を持つものであるよなあ。
2018/04/15
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