薔薇いろのメランコリヤ (角川文庫 こ 3-4)
薔薇いろのメランコリヤ (角川文庫 こ 3-4) / 感想・レビュー
konoha
文章が、詩のように美しい。退廃的なムードが漂い、フランスの恋愛映画のよう。こういう文体だと薄っぺらく感じてしまう作家もいるが、小池さんの場合は、深みとセンスの良さを感じさせる。時を経ても、新鮮であり続ける作品だと思う。好きです。
2021/04/28
佐島楓
若かった「私」はいくつも年上の女流詩人・エマと男を共有する。しかし晋平という男性が現れることで、「私」もエマも恋に苦しむようになる。双方の想いは深く、ここまで狂ったような恋を私は知らない。三角関係という陳腐な言葉では説明のつかない愛憎がここにある。結末は書かないが、お互いをつぶしてしまう恋というのはあるのだろう。そして、女性は強い。
2013/07/13
ぐうぐう
タイトルは、ギョーム・アポリネールの詩から取られている。アポリネールは、昨日を空ろな尼寺と例えた直後、薔薇いろのメランコリヤとも例える。この真逆の比喩は、昨日が移り変わることを諭している。人にとって過去とは、起こった事象の記録ではなく、あくまで記憶の産物なのだ。時間が経過する毎に、記憶はその印象を変えていく。時に甘く、時に優しく、そして時に残酷に。22年前、まだ少女だった野乃は、美しい年上の女性・エマと出会う。ここでストーリーを紹介する行為は、あまり意味を成さない。(つづく)
2019/05/20
sheemer
自分の中で妙に気になり続けていた本で、なんのはずみか一晩で再読した。性愛を直接表現しない性愛小説で、エマという性にオープンで破天荒な女性詩人に拾われるようにして同居した野乃の視点で語られる性と恋愛。スタイリッシュでドライっぽいが実はそうではなく、つながりがあるようなないような村上春樹的関係性。テンプレで書いたのでは?、という書評をしている読書子もいるようだが、私にはわからない。有名詩人のコバンザメだと自覚しつつ、離れられない愛のような何かを描いている。のだろうたぶんこれは。ようやくケリがついた感じがする。
2023/11/16
けいこ
同じ男を好きになる。という三角関係の話なのだけれど、小池さんにかかるとそんな薄っぺらい話にはもちろんならない。それぞれが自身でも気付かない程に愛に狂い、嫉妬し、孤独を深めていく様が怖くも、哀しくもあり、また官能的でその愛にこちらまで引き込まれる。ラストの展開には嵐が去った後の様な静寂に包まれていて、美しい映画を観た後の様な溜息が出た。
2020/03/14
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