狂王の庭 (角川文庫)
狂王の庭 (角川文庫) / 感想・レビュー
じいじ
どうにも感想が書きにくい小説だ。小池さん以外の著者だったら中途でブン投げていただろう。恋愛小説は好きだから、当然不倫モノも読む。不倫を「倫理」の枠に嵌めて云々しては小説が面白くない、と思っている。しかし、本作の主人公の若妻杳子は、如何せん受け入れられない。純真無垢な実の妹の婚約者に、良心をとがめながらも横恋慕して、男との逢瀬を重ねる行状は共感どころか許せない。だが流石小池真理子だ、小説としての筋は耽美で、ファンタジーに仕上げているので面白い。読後感は悪くない。小池さん愛読者なら一読する価値はあると思う。
2015/10/26
キムチ
昇りつめた性と情愛の極致という世界。個人的にはデヴュー初期頃の筆者の世界が好きだっただけに・・。東京郊外の2万坪の庭園のある邸宅、狂王たる青爾。妻の姉、杳子・・人妻でありながら情炎に身を焦がしていく。イントロは亡き母の手紙を手にした杳子の娘 翔子。まぁ、言ってしまえば、不倫の大スペクタクル、設定がルートヴィッヒの世界を思わせるだけに安っぽく空回りして行った。なんかリアル感なさすぎ。最も生活臭があり、美的要素が少ない男女なら主役になれない所も味噌。生活が貧しけりゃ、事件性を帯びるし。一時の花火を見たい方に
2012/06/15
i-miya
2010.08.05 (H14.06刊行)(系図) 陣内家、久我家。(序) 鎌倉の地に高級日本料理店「扇亭」が店開きしたのは戦後まもなくのことであった。政治家密談、しかし昭和50年代以降一般客。扇ガ谷(おうぎがやつ)の一角だけは静謐。春、シャガの花。H13.04久我杳子(ようこ)三回忌法要、一堂に。久我倉庫専務の妻だった杳子、子に翔子。その夫久我倉庫社員梶原、営業部長に、一気に。勇作の他界、6年前。一人鎌倉に暮らす杳子、T10年生まれ。旧侯爵家久我家。
2010/08/06
速読おやじ
戦後間もない時代の旧公爵家をめぐる壮絶な不倫の物語。不倫の当事者である香子が亡くなり、家の解体工事の際に見つかったスケッチブックにその全貌が書かれていた。不倫相手の青爾=狂王が恋に溺れて精神が壊れてゆく。正直、不倫小説は余り自分の好みではないし、なかなか共感できない性分なのだ(と自分の真面目さをアピール(笑))。でもこの小説が美しいのは、情景描写、特に巨大で豪華な庭の描写だ。これが細かくて、細かくて。しかし、長い小説だったなあ。。
2022/10/10
ハナコ
青爾と杳子、禁断の恋ではあるけれども、だからこそ、といってはおかしいが成就させてあげたい純愛、魂の愛だった。待ち受けていたものがなんであろうと、やはり二人は夢うつつのはざまで、抱き合って離れることはない…そう、あの美しくも非現実的な青爾の庭で。どんなに穏やかで凪いでいるように見える海だろうと、その底にはどんな激しい潮流が渦巻いているかもしれない、人の心とは、あるいは人生のひとときとは、そうしたものかもしれない。圧倒的な美しさでのみ込まれた作品だった。
2018/10/07
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