六道ヶ辻たまゆらの鏡: 大正ヴァンパイア伝説 (角川文庫 く 2-18)
六道ヶ辻たまゆらの鏡: 大正ヴァンパイア伝説 (角川文庫 く 2-18) / 感想・レビュー
カナン
正しく大正浪漫ファンタジア! 作者が云う通り「時代考証」や「論理的統合性」などの至極真っ当な言葉はこの作品に関してはただただ野暮ったい響きでしかない。都合の良い架空の大正時代と絢爛豪華なゴシック建築と妖しい色香を纏ったヴァンパイア、そして可憐で傲慢で聡明な美少女達と、それらを一層眩く飾り立てる贅の限りを尽くした着物や料理や調度品の数々。美しいもの以外は存在価値など全く無いと思っている伯爵様のように、栗本女史本人が愛でたいものだけを全部詰め込んだのだろうという思いきりの良さがこの本の最も面白い部分だと思う。
2015/01/14
朱音
日本でゴシックロマン調のヴァンパイア伝説をやろう、というのはなかなか難しいと思うけれど、「架空の大正浪漫」の世界観はうまくできていると思う。相変わらず美形の描写がいいんだよね。特に「美しいんだけど何かうらがありそうな美形」は実にいい。二人のお嬢さんの衣装の描写もいいです。クラシカルで素敵。物語的にはそうなるだろうなー、と思っていたところにぴたりぴたりとはまり、お約束とか様式美とかそういう感じだけどそれはそれでいいのではないでしょうか。竜介さんがでてきたのはちょっとうれしいところではあります。
2010/11/01
ako
大導寺竜介と妻になる百合の話。美しく妖しいヴァンパイア伯爵との恋。竜介と伯爵との死闘。私も伯爵に魅了されました。もし自分が百合の立場だったら同じ選択が出来ただろうか?どちらを選んでも必ずもう一方の選択を選ばなかったことを悔やむことになる。竜介との波瀾万丈の限りある生、伯爵との優美な永遠なる生。どちらも羨ましいような、そうでないような人生。
2012/10/09
はちくま
必ずしも栗本先生の良い読者ではないのだが、やはり独特の世界ですね。出てくる着物の華やかなこと!お着物お好きだったんだなあと改めて思う。目眩めく大振袖の大雪崩(あんまり大振袖は出てこないけど)。怒涛のカタストロフィも、女主人公の百合さんのきりっとした佇まいに救われる。彼が気に入るわけだよね。
2013/11/08
mai
初めて読んだ作家さん。シリーズ物とは知りませんでした。着物やお屋敷の内装の描写がとにかく美しい。そしてその文章が物語の半分以上を占めているのではと思うほど説明がなかなか終わらない。ストーリー展開もゆったりとしていて、終わりの方でやっと怒涛のイベントラッシュが来たかと思えば、あっという間にエンディング。大正ロマンの雰囲気に浸って酔うことができれば楽める小説。物語の構成としては満足とは言えませんが、美しく仄暗い雰囲気は大好きでした。
2018/07/24
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