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狂桜記―大正浪漫伝説 (角川文庫)

狂桜記―大正浪漫伝説 (角川文庫)

狂桜記―大正浪漫伝説 (角川文庫)

作家
栗本薫
出版社
角川書店
発売日
2005-10-25
ISBN
9784041500668
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狂桜記―大正浪漫伝説 (角川文庫) / 感想・レビュー

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カナン

舞台は大正。謎めいた屋敷で暮らすのは大勢の、血の繋がりすら知れぬ人々とそのお子達。崇高なまでに美しく触れない幻のような母。謎のマントの男。優雅で豪奢な着物たち。少女が歌う独逸語の旋律。さんざめくようなねえやたちの噂話。季節外れに狂い咲く桜…。そんな幻想の中で起こる子供たちの不審な死。さくさく終結し過ぎかなと思ったのですが、儚く妖しく危ういものが好きな方だと楽しめます。敷き詰められた着物の鮮やかな海に縫いとめられ、倒錯と退廃と罪に溺れてゆく美少年の描写はもっと執拗でも良かった。仄暗く背徳的で良い演出でした。

2014/10/21

藤月はな(灯れ松明の火)

大人でも子供でもない時期の苛立ち、加虐心を煽る弱い者への虐め、憧れの存在への思慕、周りを知るにつれて分かってくる家庭の歪さの描写が抉るようでした。赤マントの解釈が「子どもの無事を祈りながらも子供が消えることを心の底では望んでいた親の心の象徴」というのに子供に本当は幻想でしかない幸せな家庭像を教え込ませることに心底、憎悪していた者としては「ああ、そうか」と思ってしまいます。どんな子供でも親でも所詮、他人の人間同士でそれぞれ不幸。癩病であっただろう透子の無邪気故の残酷さと心などの弱さや醜さを蔑むが好きでした。

2012/10/25

朱音

美貌の旧家の令夫人、近づいてはいけない土蔵から聞こえる異国の歌声、ねえやたちの噂話、暗い夜に浮かび上がる小さな体、本で埋まった離れの中に広がる色彩ー桔梗色、茄子紺、若竹色、古代紫、浅葱の絹。母に似た美少年はいつしか闇に染まる。旧家の血やら横恋慕やら、退廃的でありそれでいて「浪漫」的な妖しくも美しい世界。栗本さんこういうの好きだよね…仄暗い夕闇の中に咲く桜、という印象の物語でした。クセはあるけど描写はさすがに妖しく美しい。こういう物語はあくまでも美しくなくっちゃね。

2010/10/30

kaizen@名古屋de朝活読書会

栗本薫の作品に桜がよくでてくる。セイレーンは桜井だし、緑の騎士は、桜を切る話から始まる。栗本薫は、戦後の新人類(new generation)の日本人の典型なのかもしれない。そう気がつくと、大正浪漫を書きたくなった気持ちも推測できる。新撰組ものよりは、より現実味を帯びている。あとがきの「あまりに味気なく、そしてあまりにも色気も艶も、妖しさもふしぎな憧れも消えはてたいまのこの世であってみれば、なお。」で想像がつく。他人から見れば、栗本薫は味家があり、艶も妖しさもあり、不思議ちゃんとして憧れる人なのに。なぜ。

2012/02/13

アキ

樹齢数百年を経た中将桜が庭先に構え「桜屋敷」と呼ばれる柏木家。主人公は、14歳の幹彦。普通じゃない家。東京で噂された赤マントが近所で目撃された恐怖。苛めた直後に行方不明になり死んだいとこ。大人へと急ぐ幹彦に降りかかる災難。思春期独特の子供でも大人でもない中途半端な時期の苛立ちと焦りは上手く表現できてたと思うが、これは陰鬱な家の崩壊物語。読後感はよろしくないです。

2010/09/10

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