定本 言語にとって美とはなにかI (角川ソフィア文庫)
定本 言語にとって美とはなにかI (角川ソフィア文庫) / 感想・レビュー
ヴェルナーの日記
日本近代文学において著者独自の視点で批評した一冊。テクストを自己表出性と指示表出に分け、その2つの関連性(重なり合う)を作家群の著名な作品の具体例を挙げて批評する方法で編まれている。ソシュールやデリタの構造主義とは真逆に位置づけされる批評法と思うので、読み比べてみるのも一興である。本書を読むにあたり、近代日本文学の名だたる作家の作品群を読んでおくと、より本書に対する理解が進むだろうが、なかなかそうもいかないので伊藤整と小林秀雄の作品をザックと目を通しておくと吉本隆明氏の批評法の独自性がよくわかると思う。
2017/01/15
yumiha
これまで何度も挫折したのは、まるで学術論文のような第Ⅰ章のせいだ。また、肝心の自己表出と指示表出も含めて、抽象的な言葉での説明は、こうかな?と推察しながらぶつかる他の言葉との関係に至っては理解不能となる。でも、「ダーって読むと意外にわかっちゃう」という若い編集者たちのアドバイス(by『隆明だもの』)にすがりつくように読み進めると、短歌を取り上げた第Ⅲ章あたりから読み易くなった。吉本の評価が、これまでの私にない視点だったので、ふむふむと思う。思えば私は、歌の意味とか背景とかに拘り過ぎていたようだ。
2024/08/16
しゅん
不器用さを意地で通す押しの強さ。図が出てくると分かりやすくならず、余計に混乱する。
2020/03/24
ken
「言語とは自己表出と指示表出の織物である」これが吉本特有の言語観だ。彼の言語を分類する方法は、文法や構造による言語学的分類ではなく、自己表出と指示表出の度合いによる彼独自のもの。その目的は言語にとって、引いては文学にとって美とは何かを探求することだ。その結論は明言化されていないが、彼の文章の端々から、意識の奥深くからしぼり出された自己表出の美しさを称えているように見える。そして言葉の実用性を説く道具主義的な言語観に抗い、人間の自己意識の復権を叫んでいるようにも見える。難解な書だが吉本の熱さが伝わってくる。
2021/05/26
Yuko
<記紀万葉から、鴎外、漱石、石川淳、島尾敏雄等の小説作品の他、詩歌、戯曲、俗謡など膨大な作品を引用しながら詳細に解説。文学を形づくっている「言語」の特質を追求する。文学・言語・藝術を考える上で必須の1冊> 1990年 美という抽象的な概念を、言語という側面から個々の例を挙げ具体的に分析。ここまで詳細で丹念な解説とは想像もしておらず、かなり面食らいました。旅行前の気もそぞろの時期に読む本ではなかったことは確か。ゆっくり時間をとって、じっくり読み直したい。
2019/03/12
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