藏 下 (角川文庫 み 12-4)
藏 下 (角川文庫 み 12-4) / 感想・レビュー
のびすけ
感動した。ただただ感動した。烈が完全に盲目となった不安と絶望、それを乗り越え、自らが酒造りをしたいと父に必死に懇願する意志の強さ、そして父の反対を押し切り、愛する人へ思いを伝えようとする情熱。田乃内家に不幸や困難が襲う中で、一人烈だけが自身の存在意味を問い、直向きに家と蔵を守り続けていこうとする姿に胸が震えた。旧態依然の父意造の考えや行動に疑問を感じることもあったが、それも全てひっくるめて、烈の成長を軸とする田乃内家の人間ドラマが素晴らしかった。烈が主人公ではあるが、実は田乃内家を陰で支え、→
2023/04/27
紅香@本購入まであと9冊
良縁、悪縁。人の人生はそんな連続の藁を練って作られた縄のよう。雪深い蔵の中、寒さで美味しくなったお酒のように、凍えそうな試練からも縁は次から次へと紡ぎ出されてく。正当な人間くさいドラマも好きなんだなと再確認した一冊。一人ひとり複雑な心境を抱えて、それでも尚、誰かのために生きている。たった一言で、ラスト、温かい陽だまりに包まれた。
2022/10/14
AN
下巻では主人公の成長ぶりと、大家の抱える事業の存続が語られます。父が閉じようとした蔵を娘が真っ直ぐな気持ちで再開させようとする姿は、まさに主人公の名前ながらの激しさと勢いがありました。また大家の面子を保つために登場人物が様々に翻弄されます。そんな中、自分の未来を切り開いていった主人公の生き方は清々しいもながありました。どのような運命であれ、自分の納得の行くまでとことん取り組み話し合う親子の生き方は激しくも清々しいものだったと思いました。おばさまは幸せだったのでしょうか。でもこらも彼女の選んだ道なのだと納得
2019/02/13
けいこ
日本酒を造るときの麹が発酵するときの音や香りを知りたくなった。酒造りの時の唄も聴いてみたい。烈が家督を継ぎ、酒造りを再開するときの前向きさが印象的だった。せきさんが意造に嫁いであまり幸せそうではなかったことが寂しかった。でも、せきさんが大威張りだったら、佐穂さんの立場が辛くなるし…。結婚は同じ位の格の人が良いのですね。
2015/05/23
ニノユキ
一日で完読。再読とはいえ、あっという間に読み進んでしまった。何より心に残ったのは最後の作者付記。烈結婚後の人生。涼太との結婚後、出産、夫の戦死、農地改革法による地主への大打撃。それでも最後の最後まで烈は強く生き抜いた。辛いことも多く、平和とは言い難い内容なのに幸せに感じられるのは佐穂と意造が結婚という形ではないにしろ同じ墓に入り佐穂が幸せだったと思わせる終わり方だったからなのかもしれない。
2015/03/23
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