皇帝ナポレオン 下 (角川文庫 ふ 7-5)
皇帝ナポレオン 下 (角川文庫 ふ 7-5) / 感想・レビュー
のれん
自らの覇道のため、民を国を資産を犠牲にした。 女性も新技術も進言する部下も、信用できなかったどこにでもいる男、ナポレオン。欠点だらけと指摘する告発集は、そんなナポレオンが成し遂げた独裁が如何に凄まじいかを物語る。 収束する最後の展開は整えすぎな感もあったが(タリアンとの件も吹っ切れてたし)、その整えた最後は思わず情景が浮かぶ哀しさが感嘆を呼ぶ。 この男の生き方はまさに物語であり、現実との相違こそがこの男を読み応えのある歴史にした。今も尚この独裁者は人に傍迷惑な夢を魅せるのだ。
2021/08/22
春日
上巻からはうって変わって戦場の記録が増えます。上巻マダム・タリアンに溺れていた主人公が仕事を始めたようです。モンデール氏の小冊子は固有名詞、軍事用語が多くちょっとしんどかったです。しかしついにナポレオンその人も登場。それまで伝聞でしかなかったナポレオンが主人公の目の前に現れるや、読者までもがナポレオンの魅力には惹かれざるを得ないのではないでしょうか。ナポレオン・ボナパルトとは果たして英雄か、暴君か。途中しんどくても、やはり最後まで読んで良かったです。
2013/11/05
イトノコ
やっと読了。長い、長いよ…。上巻ラストでナポレオンがパリに帰還し、モンデールとナポレオンの二つの流れが交錯する!と思いきや、モンデールの告発という形で、ナポレオンが皇帝となる前後〜エルバ島抑留までの歴史がひたすら語られる。しっかり現在の物語となるのはなんと最終章のワーテルロー決戦のみ!結局、ナポレオンは英雄でもあり独裁者でもあったのだな。毀誉褒貶が激しすぎる。驚くべきは、ひたすら戦争に明け暮れていたその生涯。あと、タレイランにも興味を惹かれた。「小説フランス革命」では扱いが酷かったけれども、やはり傑物。
2018/03/28
水戸
後半に進むにつれて、のめり込んで、読み終わったら、大きく息をついてしまいました。なんという……ナポレオンという存在を通じて、自身の主観を捨てて、けれど自分の責任も鑑みて、あらゆるものを見極めろと言われている気がしました。英雄ではないナポレオンと、だからこそ英雄になり得たナポレオン。時代と人のうねりによって、英雄になり独裁者になり、けれどその前に人間であるナポレオンへと進んで行く流れに埋没し、最後には晴れ渡った高い空を仰ぎ見て、ニヤリとする気分になりました。
2018/03/10
那生
モンデールの告発冊子が主軸となってナポレオンの辿った道を追いかける趣向が強い下巻。ついに交錯する皇帝と新聞記者の運命やいかに。ロシア戦役、ワーテルローの戦いあたりの資料の読み込みとそこから膨らんだ想像がすごいです。ナポレオンとは偉大な常勝将軍でも卑俗な皇帝でもなく、フランスという国を背負った家長的なひとりのコルシカ男。ただ人々の期待が大きすぎ、彼自身の情熱もまた大きかっただけなのだろうなと思いました。それにしてもこれなら「3時間しか眠らなかった」と言われるのも頷けるハードワークっぷり。
2012/05/08
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