N・P (角川文庫)
N・P (角川文庫) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
数多く女性作家さんがいる中で、好き嫌い云々ではなく自分の中で別次元に位置する作家さんです。もちろん代表作である『キッチン』や『TSUGUMI』も素晴らしいのですが、初期の頃、作者さんが書きたかったのは、きっとこういう作品だったのかなと(勝手ですが)思う内容でした。とにかく不思議な世界で、なんとも言い表せないのが、うれしくもあり、ある意味残念でもあります。今もなお素敵な作品を書き続けている作者さんですが、今一度初期の頃の作品を手に取り、そのクリアで不思議な世界を堪能してほしいです。やっぱり女性は是非!
おしゃべりメガネ
本作も20数年の時を経ての再読です。一時期、凄まじい勢いで私の‘読書欲’を支配した「よしもとばなな」さんですが、今作はおそらく初期の頃の作品において集大成的な位置づけになるのではと。とにかく1文1文はもちろん、一文字一文字でさえ、美しさをいかんなく発揮し、会話の流れや雰囲気にはまったく隙のない確立された「ばななワールド」が立ちはだかります。不思議な人物や出来事が、一つ、また一つと進んでいきますが、その不思議感が全く違和感なく、物語に溶け込んで描き続けるばななさんは、やっぱり他の追随を許さないでしょうね。
2015/09/27
ヴェネツィア
ランダムに読んできたが、ばなな作品もこれで24作目。これは他の彼女の物語の文体とは明らかに異質だ。「秋が牙をといでいる。時間がたたないなんて錯覚だったというふうに、ある朝突然冷たい風や高い空で思い知る。」―こんな風な表現は、まさしくばななの小説の真骨頂なのだが、語り手の風美をはじめ、他の3人いずれもの人物造形が抽象的で、生活感に乏しいのだ。彼ら同士の関係性もまた、本来は濃密であるはずなのに、希薄感がぬぐえない。近親相姦のテーマもどこか遠い。作家にとって、新しい小説の方向への模索期だったのだろうと思われる。
2012/11/25
ひろちゃん
呪われた本を訳してた元カレが死んでしまった……。今を懸命に生きている人にオススメの本。たまに死にたくなるような不幸を人それぞれ抱えている。死にたくなるような誘惑をたちきれる健全な心があるかどうか。そんな死にたくなるような物語ってどれだけの威力があるんだろう。そんな物語書きたくないわ
2015/10/27
いたろう
映画が公開されるということで、映画を観る前に再読。48歳で自殺した日本人小説家が、アメリカで英語で書いた97編の短編集「N・P」。その未発表の98編めを日本語に翻訳した翻訳者も自殺している。翻訳者の元恋人の風美の、小説家の双子の子、乙彦と咲、彼らの異母兄妹の萃とのひと夏。映画は日本・ベルギー合作、監督は、東京生まれ、日本とベルギーのハーフで、ベルギーを中心に活動する映像作家、リサ・スピリアールト、主演の風美の役は、監督の妹でアーティストのクララ、そしてそれがサイレント映画ということで、一体どういう映画に?
2022/10/10
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