江勢物語 (角川文庫 し 11-1)
江勢物語 (角川文庫 し 11-1) / 感想・レビュー
Kouro-hou
短篇集。テーマは翻訳、というか言葉の壁か。「伊勢物語」他の中世日記文学の現代語訳のパロディである表題作、ふざけてるようで案外正しそうな「生臭心経」、英語本の翻訳を宿題に出したら、学生が『雪国』を元を知らずにエロ翻訳してきたヤーサンアリ・クーワバッタ著「スノー・カントリー」が抱腹絶倒系、「訳者あとがき」はそれっぽい架空翻訳本の後書きだが、「主人公の妻が気に入らなかったので最後に殺しておいた。原作の持つ価値は減じないと思う」とぶった切るのが好きw 他にもネコ萌えエッセイ、インド旅行記2本入り。
2018/05/30
ごへいもち
相変わらずの…。表題作は笑えた。激しく同感したのは「東京のメディアが発信するものが日本を代表しているわけではない」ということ。「高校生」と言えば渋谷辺りで遊んでるイメージを持つ人が多いが、あんなのはごく一部で真っ当に勉強している高校生もたくさんいるのになぁといつも思っていたので
2012/04/11
マッピー
小説あり、エッセイあり、旅行記ありの一冊。一番面白かったのは、巻頭の『現代語訳「江勢物語」』。てっきり伊勢物語のパロディかと思ったらそれだけではなく、徒然草や枕草子、土佐日記にサラダ記念日と縦横無尽に繰り広げられるパロディは、元ネタが簡単にわかるくらいの有名な文章を、なんとも奇天烈なところに着地させるというもの。思わず噴いた箇所もいくつか。
2023/04/21
長岡紅蓮
高校の英語の授業で先生が紹介してくれた「スノー・カントリー」をふと思い出して読んでみた。滅茶苦茶な翻訳は洋楽をエキサイト翻訳してみた感じで思わずツボってしまう。名作『雪国』が、とんでもない話へと化けているので興味ある方は手にとってほしい。ヤーサンアリクーワバッタといい、シンアムーラといい、異国情緒あふれすぎ(笑)。
2018/03/18
pino
「スノー・カントリー」目当てに古書で再読。かの名作を高校生がとんでもない方向へ暴走誤訳していく、というあらすじを憶えていても、教師のツッコミのキレも相まって再び笑ってしまった。清水氏の小説はチープな感動等とは無縁で、三谷幸喜映画のように「面白かった!」と鑑賞し終えればOKな潔さがある。それは、この種の作品においてとても誠実な姿だと思う。言葉への強い感受性と理解をもって言葉を玩具にしつつ、小説の形でしか表現できない作品をつくることは本当に凄い。
2024/11/19
感想・レビューをもっと見る